2008年05月22日 00:00 〜 00:00
湯浅誠・NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長

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会見リポート

すべり台社会─貧困の本質

菊谷 隆文 (東京新聞社会部)

貧困問題を取材する時、必ずお世話になる人である。1995年から路上生活者の支援に身を投じ、2001年に自立生活サポートセンター「もやい」を設立。生活困窮者がアパート入居時に必要な連帯保証人になる活動や生活保護申請の援助を通じ、社会復帰を手助けしている。10年以上にわたり、貧困と真正面から向き合ってきた。

その経験から「この3、4年で生活相談に来る人の世代が多様化し、どんな人が相談に来ても不思議ではなくなった」と指摘する。新刊著書『反貧困』(岩波新書)で、今の日本の姿を一度転んだらどん底まですべり落ちていってしまう「すべり台社会」と名付けた。

それはすなわち、セーフティーネットの崩壊だ。全労働者の3人に1人が非正規雇用になり、年収200万円以下の給与所得者が1000万人以上に陥った今こそ社会保障の出番なのに、失業保険給付は全失業者の2割にとどまり、生活保護を申請しようとすれば窓口で門前払いされ、推定850万人が生活保護基準以下の生活を強いられている現実─。

しかし、政府は貧困の実態を認めないばかりか「生活困窮は自己責任」と断じ、ただ自立を促す。生活権を保障する憲法25条がかすむ現状を、ジャーナリストが気付く以前から湯浅氏は間近に目撃し、強い意志で私たちに訴えてきた。

「『努力した人が報われる社会』と言うが、実際は『努力できないほど追い込まれている社会』だ。マスコミも貧困の中で頑張っている人は取り上げるけど、ちょっとでも努力していない人は取り上げない。この姿勢から決別しないといけない」と、宿題も投げかけた。何万人もの生活困窮者の相談に応じてきた活動家のメッセージは「貧困問題の本質に迫れ」という叱咤でもあった。

ゲスト / Guest

  • 湯浅誠 / Makoto YUASA

    日本 / Japan

    NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長 / Non-Profit Organization : MOYAI

研究テーマ:著者と語る

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