2008年05月23日 00:00 〜 00:00
チュンマリ・サイニャソーン・ラオス国家主席

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会見リポート

脱・後発国への想い

山崎 浩志 (日本経済新聞経済部次長)

日本記者クラブの取材団は2月末にラオスを訪問した。参加者の多くはこう思ったはずである。「ラオスは穏やかでつつましい」。

面積は日本の3分の2くらい。人口は580万人。人は礼儀正しい。食べ物は素朴だが手が込んでいる。豊かな資源と自然がある。統計によると失業率は「不明」。不明だから大問題だなどとは思わない。都市と地方には所得格差があり、時に犯罪も起こるだろうが、民心を暗くするような深刻な社会不安を抱えているようにはみえないのである。

初来日のチュンマリ国家主席の言葉にも実直さがにじんでいたように思う。「国民生活をよくするため」という言葉が少なくとも5回。日本の援助への感謝を語り、人材育成への熱意を述べ、「地域と世界をつなぎ合わせていきたい」と未来を描いた。民間企業の力を高め、「2020年までに後発途上国から脱するのが目標」という。成長するメコン地域で、中国、ベトナム、タイなどに囲まれている。千波万波で押し寄せる「成長の機会」を生かすため、世界貿易機関(WTO)への加盟もにらんでいる。

経済発展のポテンシャルとして「水力発電」を挙げた。フランスやタイなど海外資金の力も借りた水力発電開発が急ピッチで進んでいる。過去10年で140億ドルに上る海外からラオスへの直接投資金額の8割はエネルギー関連。もちろん発電のすべてをラオス国内で消費するわけではなく、インドシナ周辺国への輸出が開発の目的だ。

そんな開発戦略を危うげに見つめる専門家もいないではない。国を壊さない発展を支援するやり方を日本は真剣に探してほしいと、相手がラオスだからこそ、ひいき目で思う。
 

ゲスト / Guest

  • チュンマリ・サイニャソーン / Choummaly Sayasone

    ラオス / Laos

    国家主席 / President

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