2008年04月07日 00:00 〜 00:00
松永泰行・東京外国語大学准教授「中東ベーシック」20

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会見リポート

イラン国会選挙を詳細に分析

出川 展恒 (NHK解説委員)

3月14日に投票が行われたイラン国会選挙と今後の影響について、詳細な分析が行われた。核問題、アメリカとの対立、シーア派の影響力拡大などの文脈で注目されることの多いイランだが、その国内政治を適切に理解することは難しく、各メディアの解説記事にもバラツキが見られるだけに、気鋭の専門家を講師に迎え、絶好の研究会となった。

松永さんは、まず、国会の権限が、監督者評議会によって大きく制限されるメカニズムを説明したうえで、立候補者に対する資格審査がどのような基準で行われ、失格者がどのくらいの割合で出ているのかについて、統計を示しながら解説した。今回の選挙での失格者の割合は36・4%と、これまでで最大であった。

続いて、国内の各政治勢力の分類・色分けが示された。とくに、イスラム革命の原理を忠実に推し進める「保守派」内部の派閥、すなわち、アフマディネジャド大統領を支持する勢力と、大統領を批判する勢力の構成を詳しく説明した。

そのうえで、今回の選挙で保守派が勝利を収めた要因と影響の分析に話は進んだ。最高指導者ハメネイ師の介入で保守派の内部分裂が回避され、監督者評議会の資格審査で改革派の有力者たちが排除されたため、保守派の勝利があらかじめ約束されていたこと。選挙結果は、イランの対外政策や核開発推進に、ほとんど影響を与えないこと。激しいインフレなど経済政策に対する国民の不満や批判は強いものの、アフマディネジャド大統領は、ハメネイ師の後ろ盾を得ていることから、今後、有力なライバルが出現しない限り、来年6月の大統領選挙で再選される可能性が高いことなどが、明快に解説された。

投票日のイランを現地調査しているだけに、松永さんの話は、現場感覚にあふれ、説得力が光っていた。

ゲスト / Guest

  • 松永泰行 / Yasuyuki MATSUNAGA

    日本 / Japan

    東京外国語大学大学院准教授 / Associate Professor, Tokyo University of Foreign Studies

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:20

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