2008年04月28日 00:00 〜 00:00
東郷和彦・元外務省欧亜局長「ロシア」12

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会見リポート

熱弁─北方領土交渉

石郷岡 建 (毎日新聞出身)

講演終了後、出席者の会話が聞こえてきた。「面白かったなぁ」「あぁ、あんな元気な奴も(まだ外務省に)いるんだ」。

鈴木宗男衆院議員の逮捕など、自身も外務省を追われる結果になった一連のスキャンダル騒動以来初の講演だったが、声をからし、情熱的に、日露交渉の経過を語ってくれた。

戦後の領土交渉は、これまで、5回のチャンスがあったという。特に、イルクーツクでのプーチン・森首脳会談は一番解決に近づいたと主張した。

北方4島のうち、返還がほぼ決まっている「歯舞・色丹」と、なお交渉を必要とする「国後・択捉」の問題を分離して交渉する、いわゆる「並行協議」提案で、プーチン大統領は「ノー」とは言わなかった。

しかし、「4島一括返還放棄」につながるとの批判が日本国内から噴き出し、特に、批判派の急先鋒だった末次一郎・安保研代表と、「並行協議」支持の鈴木宗男議員が激突し、領土交渉は開始直前で、空中分解してしまった。

「ロシア側はテーブルまで出てきたのに、日本側は引いてしまった──」。痛恨の思いが今も残るような説明だった。

批判派からすると、別の見解はあるかもしれない。しかし、その後の領土交渉は大きく後退し、「交渉を動かす雰囲気はなくなった」と断言する。外務省生活の半分をソ連・ロシアにかけた人生を振り返ると、残念でならないという。

外交交渉というのは、国の立場を乗り越えて提案することはできない。しかし、「交渉が本当に動くときは、命を懸けた仕事になる」と力説する。そして、「意味がある仕事をしてほしい」と、外務省の後輩に訴えた。

熱弁を聞いていると、改めて、一連の騒動は何だったのか、また「北方領土問題」とは、一体、何だろうかとの思いに駆られた。

ゲスト / Guest

  • 東郷和彦 / Kazuhiko TOGO

    日本 / Japan

    元外務省欧亜局長 / Former Chief, European and Oceanic Affairs Bureau, MOFA

研究テーマ:ロシア

研究会回数:12

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