2008年04月24日 00:00 〜 00:00
ベニータ・フェレロ=ヴァルトナー・EU対外関係担当委員

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会見リポート

発言力を増すEU

池村 俊郎 (読売新聞東京本社調査研究本部・主任研究員)

最近、国際政治で欧州連合(EU)の発言力が増大している。とくに全人類への挑戦となりつつある気候変動問題で、その野心的取り組みが際立つ。

「気候変動、エネルギー・水・食糧危機、貧困、国家崩壊…グローバルな危機に国際社会が共通の対策をとれなければ、再び一国主義が蔓延する」。行き着く先は戦争に由来せずとも、人類が直面するであろう未曽有の悲劇というわけだ。

オーストリア外相を務めたベテラン外交官。4月下旬、東京で開催された日本・EU首脳協議に出席するため来日した。17回を重ねる首脳協議も、従来の通商問題を主とした色合いから、グローバルな諸問題の討議に力点が移っている。

会見で委員は「日本は自由と民主主義、法の支配、人権の価値観を共有する重要なパートナー」と力説した。それは、まだ価値観を共有できていない中国に対する政治的メッセージとも受けとれた。折しも、チベット問題に関連し、北京五輪の聖火リレーが各国で混乱を招いていた。

「ダライ・ラマはチベットに高度な自治を要求する一方で、暴力を批判している。その穏健な姿勢がまさしくEUの主張でもある」

温暖化問題でいえば、EUは昨年、1990年比で2020年までに温室効果ガス20%削減を決定している。北欧を中心に炭素税が導入され、排出権取引で先頭を走る。将来、地球にやさしくない活動による産品を国際貿易から締め出す時代が到来したら、EUの先進性に改めて驚かされるはずだ。

会場からの質問ごとにメモをとり、丁寧かつ明確に回答する委員の対応に、会見参加者から賞賛の声が聞かれた。EUスポークスパーソンの重役をこなし、欧州外交に新しい顔の登場を印象づけた。

ゲスト / Guest

  • ベニータ・フェレロ=ヴァルトナー / Benita FERRERO-WALDNER

    欧州連合 / EU

    EU対外関係担当委員 / Committee of Foreign Affairs, EU

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