2008年03月10日 00:00 〜 00:00
荒このみ・東京外国語大学教授「アメリカの底流」9

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会見リポート

アメリカン・ドリームの行方

西村 卓也 (北海道新聞国際部編集委員)

米大統領選の民主党指名候補選びは、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン両上院議員による大激戦となった。初の「黒人」大統領か、初の女性大統領か。両候補に託された「アメリカン・ドリーム」を多角的に解説した。

家柄も何もない者が才覚と努力で巨大な富を手に入れる。この「夢」は、実は白人男性だけのもので、女性や「黒人」には許されなかった。

女性の権利拡張運動と奴隷解放運動は、互いに連動して19世紀前半に始まった。女性の参政権獲得が1920年。「黒人」の選挙権獲得は1965年。そして今年、このどちらかが米国の最高指導者になるかというところまで来た。

とりわけ現代の「アメリカン・ドリーム」は、「単に金持ちになることから、政治的に成功することへと変質している」という。米国人の精神基盤である「夢」の形がどう変化するか、注目の年なのだ。

それでも奴隷制度の歴史は、現代の人々の心理に生きている。オバマ氏の強みは奴隷の子孫ではないことで、「だからリベラルな白人の支持を受けた」とみる。そのオバマ氏が最近「黒人っぽくなってきた」との分析は面白い。「イエス・ウィ・キャン」のスローガンを聴衆と掛け合いで叫ぶ演説は、黒人教会での説法に通じるという。

一方、クリントン氏は「短い時間で論理的な説明をする能力がすばらしい」とほめちぎった。夫の不倫にも耐え、ひたすら成功を目指す姿を典型的な「政治人間」と評した。

自身の夢は「クリントン大統領、オバマ副大統領」。そういえば、両者の組み合わせは「ドリーム・チケット」と呼ばれるが、背景に重層的な歴史があることを思い知った。

ゲスト / Guest

  • 荒このみ / Konomi ARA

    日本 / Japan

    東京外国語大学教授 / Professor, TUFS

研究テーマ:アメリカの底流

研究会回数:9

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