会見リポート
2008年03月31日
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スラポン・スープウォンリー・タイ副首相・財務相
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会見リポート
経済活性化の司令塔
山崎 浩志 (日本経済新聞経済部次長)
タイでは立憲君主制に移行した1932年以降、20回近いクーデターが起きている。言葉がもつ際どいイメージとやや違って、何年かおきに起こる出来事のひとつという見方はタイ進出の日本企業などからも聞かれる。とはいえ、高成長を続けて東南アジアの優等生となった現在のタイにとって、15年ぶりに起きた一昨年のクーデターは大きなダメージとなりかねない際どい事件だったはずだ。
そのクーデター政権に代わって発足した新政権で副首相兼財務相。会見では国内外の信頼回復のための一貫した政策運営を訴え、外国資本の呼び込みを積極化する考えも強調した。「経済再興」を最優先課題に掲げるサマック新首相のもと、個人の所得税軽減や法人税率の引き下げ、資本規制策の撤廃など経済活性化策を繰り出す司令塔だ。憲法改正にまで言及して「政策の一貫性」を訴えたのは、安定投資先としてのタイを是が非でもアピールしたかったからだろう。
そのタイもベトナムやカンボジアなど近隣国の成長で勝ち組の座を脅かされている。低賃金・豊富な労働力といった外資進出の利点が薄まっているからだ。高いレベルの知識や技術を培って、タイを単なる生産拠点ではない国へと再生するため、会見では「バリュークリエーション・エコノミー」というフレーズを繰り返した。この先も続く外国訪問は、内外に焼きついたクーデターの記憶を払拭し、新たな成長ステージを目指すタイへの投資を促す旅となる。
今回の来日目的には、バンコクで計画中の地下鉄網整備についての円借款契約の調印も入っているという。経済開発のためタイは今後数年で都市交通網整備に多額の資金をつぎ込む予定。もうひとつの名物、「交通渋滞」も解消に向かうだろうか……。
ゲスト / Guest
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スラポン・スープウォンリー
タイ / Thailand
副首相・財務相 / Vice Prime Minister/Minister of Finance