2008年03月07日 00:00 〜 00:00
門間理良・文科省教科書調査官「中国」8

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会見リポート

“静かな選挙”の後は変化も

飯田 和郎 (毎日新聞外信部副部長)

過去3回の台湾総統選挙を、門間さんはこのように評した。

「1996年は初の民選により初の台湾人総統(李登輝氏)の誕生、2000年は陳水扁総統当選で初の1政権交代、そして04年は初の住民投票が実施された」

では、与党・民進党の謝長廷候補と野党・国民党の馬英九候補による3月22日の総統選には、どのような「初」があるのか。門間さんは「初めての静かな選挙」と表現した。

1月の立法委員(国会議員)選挙で民進党は惨敗した。有権者の「台湾人意識」を刺激し、それを民進党への得票に結びつけようとした陳総統の手法は有権者に否定されたといえる。さらに共に「対中関係の安定」を訴える謝、馬両候補だけに、大型選挙のたびに熱く燃えた台湾は、静けさに包まれているという。

それは「淡々と選挙戦を進める馬氏」(門間さん)に有利な情勢を生み出す。強固な地盤を持つ国民党にとって「静かで争点のない選挙」こそ、政権奪回に結びつくわけだ。「反国民党」が色濃い南部でも馬氏は着実に浸透を図っていたようだ。

2期8年間の民進党政権を経て台湾を今、閉塞感が覆う。公認候補選定に端を発した党内派閥抗争のしこりが尾を引き、台湾の選挙のたびに見られた「振り子現象」も今回はあまり見られなかった。

門間さんの話は投票日前だったが、「このままでは馬氏が勝つ」と選挙結果を予測。結果はそのとおりになった。台湾島内を刺激しまいと、抑制的態度に終始した中国の胡錦濤政権の「側面支援」も馬氏の勝因と言えるだろう。

総統選後の中台関係はとりあえず安定へと向かう。米中、日中それぞれの2国間関係がおおむね順調に推移する中、「四角関係」の一つ、日本が地域で果たす役割にも、微妙な変化が出てくるかもしれない。

ゲスト / Guest

  • 門間理良 / Rira MONNMA

    日本 / Japan

    文科省教科書調査官 / Investigator of Textbook, Ministry of Education

研究テーマ:中国

研究会回数:8

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