2008年02月20日 00:00 〜 00:00
沼野恭子・ロシア文学研究者「ロシア」9

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会見リポート

新ジャンルでにぎわう現代文学

宮田 謙一 (朝日新聞論説副主幹)

ロシア文学といえばドストエフスキー、トルストイといったずっしり重い本格派を思い浮かべるが、ソ連崩壊後の文学界はとんでもない景色になっているようだ。

かつての帝政ロシア時代を懐かしむノスタルジー文学の隆盛は分かる。それに加えて、「強いロシア」志向の民族派文学、成り金族の生態を描くセレブ風俗文学、女性捜査官が活躍する推理小説などなど。

80年代から90年代末にかけての政治、経済、社会の大混迷、そしてプーチン時代の大国復権という歴史の変遷を映しているのだろう。

エリツィン時代の生活困窮ぶりを思えば、人々の暮らしは活字どころではなかったに違いない。なのに、どっこいロシア人たちはしぶとく本を手放さなかった。

ソ連時代の、エリートと大衆に二分されがちな社会が変わり、「中間小説」ともいうべきジャンルが成長してきているのだそうだ。

そんな中で、特筆すべきことが一つある。日本ブームである。ロシアでの村上春樹の人気はすでに知られているが、ボリス・アクーニンという作家の推理小説シリーズが大変な人気で、日本への関心をかきたてる原動力になっているという。

名前は日本語の「悪人」をもじったペンネームで、もともとは日本文学の研究者。三島由紀夫の翻訳を出したこともあるという。帝政ロシア時代末期を舞台とする彼の小説には「日本」がよく登場する。

トヨタやソニーが日本の顔になる場合が多いけれど、ハルキやアクーニンで知られる日本というのも悪くない。

ナビゲーター役の沼野さんはアクーニン作品の翻訳を岩波書店から出している。相当な語学力がないとロシア現代文学に触れるのは難しいので、ご関心の向きはぜひご一読を。

ゲスト / Guest

  • 沼野恭子 / Kyoko NUMANO

    日本 / Japan

    ロシア文学研究者 / Researcher, Russian Literature

研究テーマ:ロシア

研究会回数:9

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