2008年02月01日 00:00 〜 00:00
スティーブン・スミス・オーストラリア外相

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会見リポート

捕鯨問題でジレンマも

坂口 智 (朝日新聞外交・国際グループ)

昨年11年ぶりに政権を奪還した豪州労働党政権のスミス外相は、米国でライス国務長官などと会談後、そのまま来日した。米国との同盟を外交・安保の基盤とし、アジアでは日本が最重要パートナーという基本路線については前政権を踏襲するという、明確なシグナル発信の意図がうかがえる。外相は「日米豪3カ国間の安全保障、戦略面での協力を追求していく」と表明した。

だが、日豪間では、捕鯨問題がかつてないトラブルとなっている。ラッド政権は、環境保護団体が日本の調査捕鯨船の船舶会社を訴えた訴訟で、前ハワード政権が提出していた訴訟継続への反対意見を撤回。これを受けて連邦裁判所は、南極海での調査捕鯨が、豪国内法で定める「クジラ保護区」に違反するとの判決を下した。南極の領有権主張に基づく「保護区」で、国際的には認められていないが、過激な捕鯨妨害活動を続ける団体「シー・シェパード」は、この判決を奇貨として、「自分たちは日本の違法行為を止めようとしている」と主張している。

労働党は、総選挙で、捕鯨を含む環境問題を、保守連合との違いを訴える目玉とした結果、「環境票」を意識したパフォーマンスをとらざるを得なくなっているようにみえる。国際司法裁判所または国際海洋法裁判所への提訴を検討しているというが、たとえ日本の現在の調査捕鯨のやり方が違法という判決を得たとしても、逆に調査捕鯨そのものの正当性は確認されかねないというジレンマにも陥っている。

スミス外相は両国が「この問題を他の関係に波及させないことで合意した」と強調した。が、一般国民の感情レベルではどうか。「パフォーマンス」が取り返しのつかない悪影響を与えないことを祈るのみだ。

ゲスト / Guest

  • スティーブン・スミス / Stephen Smith

    オーストラリア / Australia

    外相 / Minister of Foreign Affairs

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