2007年12月12日 00:00 〜 00:00
三村明夫・新日鉄社長

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会見リポート

明快に経営哲学

小此木 潔 (朝日新聞編集担当補佐)

「立て板に水」の話しぶり。質問には、にこやかに応じて的をはずさず、コミュニケーション能力の高さを印象付けた。

大合理化で経営を立て直したところに世界的な鉄鋼需要の盛り上がりを受けて経営は順風満帆。しかし「合理化には弊害もある。今日の利益のために明日の利益を犠牲にすることだ」。だから、従業員教育や設備のメンテナンス、投資に力を注ぐという。グローバル戦略は「高級品と技術力を武器に規模を拡大し利益成長を図る」と明快だ。規模拡大の限界は他の大手との「ソフトアライアンス」で補い、買収の脅威を押さえ込んでいく方針。攻めの経営こそ企業防衛に役立つとの考えである。

「企業の強さは、経営のリーダーシップと、鍛えられた現場力」といい、社長の役割は「何が問題かを理解し、それを従業員と共有し、対策を立てることだ」と経営哲学を披歴。アルセロール・ミッタルという脅威の登場で従業員と問題意識を共有できたことは幸運だった、とも。

日本経団連副会長らしく、「高品質の鉄の供給を通じた産業連携で日本製造業の強みを発揮し、経済の発展に貢献する」と自負を語った。

世界的な省エネ推進で温暖化に立ち向かうとの説明にも力を込めた。ただ残念だったのは、欧米で盛り上がる排出量取引を国内で導入することに否定的な姿勢を崩さなかったことだ。「二酸化炭素削減にそれがどう役立つのかがわからない。努力した企業が報われない仕組みには賛成できない。私を折伏できるなら、してもらいたい」と、笑顔とは裏腹に強硬。「排出量取引の制度設計のなかで折り合う余地があるのではないか」との質問に、「議論の余地」をほのめかしたにとどまった。

ゲスト / Guest

  • 三村明夫 / Akio Mimura

    日本 / Japan

    新日鉄社長 / President, Nippon Steel Corporation

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