2007年12月10日 00:00 〜 00:00
袴田茂樹・青山学院大学教授「ロシア」8

申し込み締め切り

会見リポート

磐石のプーチン体制に弱さが同居

名越 健郎 (時事通信外信部長)

ロシア下院選の直後、プーチン大統領による後継者(メドベージェフ第一副首相)指名の前日という微妙なタイミングの中で、ロシア研究の第一人者に重厚、緻密なロシア政局分析をしてもらった。

下院選は与党圧勝という予想通りの展開だったが、プーチン政権が総動員態勢で臨んだのは、「政権交代後もプーチンを中心とする権力構造を維持し、権力・利権グループのバランス崩壊を阻止し、低い投票率を回避するためだった」と分析。院政の伝統がないロシアで政権存続の絶対的正統性が必要だったと強調した。

経済が好調で大統領の支持率7割以上というロシアは政治・社会が安定しているとみられがちだが、「最高指導者の任期8年目で支持率が7、8割という高さは通常考えられない。欧米や日本で政権支持率が落ち込むのは民主主義制度が正常に機能している証拠」と述べ、暴力や腐敗・汚職の続く中で最高指導者にすがりつかざるを得ないロシア社会の弱さを鋭く指摘した。

「ソ連世代の人々の原体験は第二次大戦だったが、現在の世代の原体験はソ連崩壊後の屈辱の90年代だった。強力な指導者がいないと、ゴルバチョフ、エリツィン時代のネガティブな原体験に戻るという恐れがある」との分析も納得させられた。

そのロシアは最近、国家戦略を転換し、資源輸出国から現代的な産業立国を目指しているという。「ロシアに必要な技術は日本にあり、『日本再発見』の動きもある。政治面ではまだ日本に厳しいが、経済交流で以前と異なるパターンが出ている」とし、日本のプレゼンスが増大していることを指摘。

まだ公表されていなかった後継者についての質問には「クレムリノロジーはしばしば間違えるので…」と巧みにかわしていた。

ゲスト / Guest

  • 袴田茂樹 / Shigeki Hakamada

    日本 / Japan

    青山学院大学教授 / Professor, Aoyama Gakuin University

研究テーマ:ロシア

研究会回数:8

ページのTOPへ