2007年11月16日 00:00 〜 00:00
斉藤惇・東京証券取引所社長

申し込み締め切り


会見リポート

日本経済の復権を

山田 伸二 (NHK解説委員室専門委員)

とにかく雄弁な人である。日本経済の課題から東京市場の問題まで、ある時は外国の例を引き合いに出し、ある時は歴史的なうんちくを披露して、自由自在に持論を展開した。

斉藤さんの最大の主張は、「栄光の座から転落した日本経済を、何とか復権させたい」ということである。かつて、一人当たりのGDPが世界一だったのに、今や18位に転落して普通の国になってしまった日本。こんな現実に危機意識を持たないことこそ、日本の問題だと訴える。

話の中で、私が一番共感したのは、日本人は問題を「日本という小さなコップの中でしか考えようとしない。そうではなくて、世界という大きな枠組みの中で見てほしい」という訴えだった。私も若い人たちに、問題を考えるとき、歴史的な視点で見直し、外国と比較して世界の中での位置をつかむよう話している。とは言いながら、私自身狭い枠組みに閉じこもりそうになるので、話を聞きながら大いに反省したものだ。

雄弁な日本経済論に対して、東証は日本復権のために何をするかという課題には、「出来ることは限られている」と控えめであった。プロのための特別な市場を作りたいと言うのが唯一の具体策で、これはちょっと期待はずれであった。

確かに、市場経済と言っても東証は脇役だし、出来ることは限られているのは確かである。株式市場の主役は投資家であり企業だからだ。

斉藤さんが東証社長に就任する直前にお目にかかった時、「世界の常識を東証に植え付けたい」と話していた。世界に目をというこの日の訴えは、危機意識を持たず挑戦もしないでぬくぬくと過ごしている、日本の経営者や投資家への痛烈な批判というわけだろう。

ゲスト / Guest

  • 斉藤惇 / Atsushi Saito

    日本 / Japan

    東京証券取引所社長 / President, Tokyo Stock Exchange Group

ページのTOPへ