2007年11月02日 00:00 〜 00:00
古矢旬・東京大学教授「アメリカの底流」7

会見メモ


会見リポート

ヒラリー・クリントン優位の背景

沢井 俊光 (共同通信外信部次長)

ブッシュ大統領の後継者を決める米大統領選挙まであと1年。初の女性大統領を目指すヒラリー・クリントン上院議員を中心にした選挙戦の行方に興味は尽きない。昨年の中間選挙での民主党勝利で、「米国の政治は保守からリベラルへ大きく転換した」との指摘もなされたが、本当にそうなのだろうか?

ニューディール以降の米国政治の底流を研究する古矢教授は「グラスルーツで世論の大きな変化があったわけではない」として、「何十年に一度の大変化を起こしたとは思えない。むしろ保守的な潮流は徐々にしか変わっていない」と分析する。

ここまでの選挙戦でのクリントン氏の優位についても、古矢教授はリベラル路線ではなく、中道路線を取ったことが奏功しているとみる。

確かに「前世紀の真ん中に、アメリカの中央で、中産階級の家に生まれた」と「ミドル」を強調するクリントン氏は、保守的な言葉でリーダーシップを語る場面が目立つ。

古矢教授によると、それはライバルのオバマ上院議員のおかげだという。「黒人ということもあり、オバマが左に立ってくれているおかげで、クリントンは安心して中央に動いて活動できる。もしオバマがいなければ、クリントンは“転向”ということを言われる。今のクリントンの成功を助けているのは、皮肉なことに、前半でのオバマの成功」と、教授は語る。

ルーズベルトのニューディール連合は、レーガン革命で形成された保守連合にとって代わられ、その流れはブッシュ現政権下の保守主義へと連なる。「思想的対抗軸のない純化されたレーガニズム」(古矢教授)と位置付けられる現在の保守主義が次の大統領を選ぶ過程でどう変わっていくのか、目を凝らす必要がある。

ゲスト / Guest

  • 古矢旬 / Jun Furuya

    日本 / Japan

    東京大学教授 / Professor, Tokyo University

研究テーマ:アメリカの底流

研究会回数:7

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