2007年11月12日 00:00 〜 00:00
ミハイル・M.ベールイ・駐日ロシア大使

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会見リポート

3つのステレオタイプからの脱却

副島 英樹 (朝日新聞外交・国際グループ次長)

ベールイ氏が駐日ロシア特命全権大使に着任して約10カ月。日本記者クラブでの初会見の機会を「名誉」と表現したのも、あながち社交辞令ではなかったのかもしれない。とかくロシアがマイナスイメージで日本メディアに登場することが多いと実感していたのだろう。「ロシアの客観的情報を伝えるのが私の任務だ」と述べ、「三つのステレオタイプからの脱却」を強く訴えた。

「ロシアはかつての全体主義ソ連と何ら変わらない」「ロシアは今も先進国からの経済協力を必要としている」「新しいロシアは帝国的政策に戻っている」──。大使は、これらのステレオタイプが今も残り、いずれも根拠なく考えられたものだと解説した。その概要はこうだ。

ソ連崩壊後、90年代のロシアは痛みの伴う制度改革の渦中にあり、弱った国だった。つらい時期には外からの支援も必要だった。やっと今、経済的にも体力を回復し、安定を取り戻し、国益を守り、国際社会でしっかりとした地位を占められるようになった。そのことが、帝国的復活と言い換えられている──。

大使はまた、ロシアは武力行使決定の鍵を国連に置くが、一部の大国は一極支配を試みて世界を不安定化させたと指摘し、イラクの例を挙げて暗に米国を批判した。言論の自由が後退したとの西側からの批判についても、「あらかじめ作った結論に事象を当てはめていくやり方だ」と反論。自由だったと言われる90年代のマスコミの実態は、質的にも責任感の面でも問題があったと述べた。

日ロの領土問題では、相互に受け入れ可能な解決策を訴え、ここでもマスコミの影響力に言及した。質疑応答も含め昼食会は予定を30分近くもオーバー。「ロシアの伝道師」としての使命感は見えた気がした。

ゲスト / Guest

  • ミハイル・M.ベールイ / Mihail Mihailovich Beli

    ロシア / Russian

    駐日ロシア大使 / Ambassador from Russian to Japan

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