2007年11月07日 00:00 〜 00:00
下斗米伸夫・法政大学教授「ロシア」6

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会見リポート

90年の時空を超え縦横な概論

名越 健郎 (時事通信外信部長)

ロシア社会主義革命90周年記念日に当たる11月7日、レーニンからプーチン、そしてポスト・プーチンまでを豊富な知識とユニークな歴史観に沿って、90年の時空を超えて縦横に語ってもらった。

「1917年のボルシェビキ革命を主導したグループは、ピョートル大帝のロシア正教会改革に抵抗した古儀式派の流れを汲む人たちだ。最初にソビエト(会議)が誕生したモスクワ東部のイワノボは古儀式派の拠点だった。ロシア革命は労働者・農民の革命というより、隠れキリシタンに似た古儀式派の影響がある」との指摘は興味深い。

ソ連時代のモロトフ外相やイデオローグのスースロフらも古儀式派と関係があったという。古儀式派は「土地は神のもの」とみなしており、ソ連解体後に資源簒奪を図ったオリガルヒ(新興財閥)はこの流れに反したのだ。

旧ソ連と現在のロシアの比較について、「閉鎖型ソ連時代のエリート序列は、軍・農・鉱・商の順で、いわば“士農工商”だったが、エネルギー主導の現在のロシアは、鉱・金融・軍・農の格付けに変わった」との分析もなるほどと思わせた。

ソ連・ロシアの指導者が必ず前任者を批判ないし否定してきた経緯に触れながら、プーチンがエリツィン前政権を反面教師にした実態を紹介。「ゴルバチョフ、エリツィン時代と違って、石油価格高騰に恵まれたプーチンは幸運な改革派。統治は成功したと位置付けられる」と評価した。

そのプーチンは今、「今年の大統領教書で産業政策を重視した。資源依存の『北のサウジアラビア』からの脱却を狙う」と分析。プーチン後については、いくつかの選択肢を挙げながら、「来年5月の大統領退陣をもってプーチン時代が終わるとはいえない」と締めくくった。

ゲスト / Guest

  • 下斗米伸夫 / Nobuo Shimotomai

    日本 / Japan

    法政大学教授 / Professor , Hosei University

研究テーマ:ロシア

研究会回数:6

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