2007年11月26日 00:00 〜 00:00
尾身茂・WHO西太平洋事務局長

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会見リポート

“人”中心の医療を

草間 俊介 (東京新聞生活部)

世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局は11月25日、東京でシンポジムを開催、「“人”中心の医療」という宣言を打ち出した。中心となった尾身茂事務局長がシンポジウム翌日、会見した。

人中心の医療とは、尾身事務局長によると、日本で現在叫ばれている「患者中心の医療」を、さらに一歩進め徹底させる考え方だという。

尾身氏は、WHOがアジア地域でこれを打ち出してきた背景について、「10年前だったら、(アジアで人中心の医療とは)ぜいたくだと言われただろうが─」と前置きし、アジアの著しい経済発展と、それに伴う社会の変化により市民の医療へのニーズが変質してきたことを挙げた。

たとえば、アジア地域では日本だけでなく、生活習慣病に起因する疾病が、死因の大半を占める時代になり、それらの予防、健康増進を図る制度が必要となってきた。

そのためには、病気を治療するだけが医療の仕事ではない。財政部門なども巻き込み、広い視野に立ち、人の心と体をトータルに扱う医療制度が求められているのだという。

これは日本にこそあてはまる。医療制度改革の方向性を示すものだ。また、今や経済、文化、教育など多分野で日本のライバルとなった中国、韓国、東南アジアなども医療では、日本と共通の悩みを持つようになったということだろう。

一方、WHO西太平洋地域事務局といえば、2003年のSARS対策の最前線にあった。そのことに質問が出て、尾身氏は当時を振り返り、「毎日が緊張の連続で、戦場のような気がした」と語っていた。

日本政府は医療、保健衛生の分野で、もっと国際貢献を考えよう。戦車や軍艦をそろえるだけが、国と国民を守ることではないのだから。

ゲスト / Guest

  • 尾身茂 / Shigeru Omi

    日本 / Japan

    WHO西太平洋事務局長 / Secretary‐General, WHO Western Pacific Region

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