2007年11月16日 00:00 〜 00:00
上野俊彦・上智大学教授「ロシア」7

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会見リポート

ロシアの07─08選挙サイクル

飯島 一孝 (毎日新聞外信部編集委員)

ロシアの下院選(12月2日投開票)直前だったので、演題そのものがジャーナリストらの関心を呼んだ。

最初に上野教授は「大上段に構えた議論は得意でない」といいながら、欧米諸国から盛んに指摘されたロシアの「民主化後退論」を俎上にあげた。批判が暗黙のモデルを想定して行われていると指摘、「社会は異なる歴史と文化を持っているので、一つのモデルをあてはめて議論するのは生産的でない」と一蹴した。

さらに、「民主化の後退や権威主義化などのレッテルを貼って政治を理解していると思いこむのは間違い」と決め付け、客観的事実を丹念に見ていく大切さを強調した。

続いて選挙制度と選挙に関する世論調査をリンクさせ、見どころを説明した。今回から小選挙区制がなくなり比例代表制一本になるうえ、得票率7%以上の政党に議席が配分される。前回までは得票率5%で議席が配分されたので「非民主的」との指摘もあるが、上野教授は「政党数を減らすためで、今回最大で4党、場合によっては2党に絞られる。問題は第2党が共産党で、政権交代の受け皿にならないことだ。ただ、地域別に候補者名簿を提出するので、地域密着型の選挙運動が行われることには変わりない」と分析した。

また、プーチン大統領が与党「統一ロシア」の候補者名簿第1位に搭載され、大統領の信任投票の様相となっている。上野教授は「大統領に批判的な人は投票しないだろうから、ソ連時代同様、投票率が注目される選挙になった」と指摘した。

来年3月の大統領選については予想を避けたが、「間違いないのは、クレムリンが選んだ候補が当選すること」と述べた。とらえどころのないロシアの政治を選挙の仕組みや世論調査から割り出していく緻密な手法に学ぶところが多かった。

ゲスト / Guest

  • 上野俊彦 / Toshihiko Ueno

    日本 / Japan

    上智大学教授 / Professor, Sophia University

研究テーマ:ロシア

研究会回数:7

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