2007年10月31日 00:00 〜 00:00
酒井明司・三菱商事業務部ロシア担当次長「ロシア」5

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会見リポート

ロシア・ビジネス論も展開

石郷岡 建 (毎日新聞出身 日本大学総合科学研究所教授)

ロシア最大の企業で、世界最大の天然ガス会社でもある「ガスプロム」については、その実態が意外と知られていない。ロシア社会に大きな影響力を持ち、国家の命運を握るともいわれながら、その情報はなかなか入ってこないのが実情だ。

日本では数少ない専門家でもある酒井さんは、「ガスプロム」の強さ、弱さ、問題点を簡潔に話してくれた。例えば、急激な発展・拡大に人材が追いついていない。将来への予見不確実性の恐れから長期契約に固執する。今後の開発について、企業内部のコンセンサスがない──など。

また、長年の経験からのロシア人論およびロシア・ビジネス論が面白かった。「ロシアは独裁国家といわれるが、上が命令しても、下はいうことを聞かない。人間的に信服していない限り、命令には拒絶する」という指摘は、ロシア人のアナーキーな性格をよく表している。さらに、「ロシアでは得体の知れないことがおきるが、陰謀は2%で、カオス(混沌)が98%だ」という指摘もなるほどと思う。「契約とはある時点での当事者間の合意に過ぎない。明日は何が変わるか分からない。変わるのならば、また合意をすればいい」という大らかな(?)「契約概念」はユーラシア大陸を駆け巡った草原遊牧民族の血を実感させる。そして、「個人関係を重視するメンタリティは不特定多数を相手にするビジネス、例えば、金融、流通などには合わないのではないか?」との説明はビジネスマンならではの発言だった。もちろん、ロシア社会は変化しており、市場経済で育った若い世代が生まれつつある。それでも、変わらない部分はあるのかもしれない。ロシアは「不可解、謎の国」といわれるが、生身の付き合いから生まれる情報がいかに貴重であるか、つくづくと実感させられた研究会だった。


ゲスト / Guest

  • 酒井明司 / Satoshi Sakai

    日本 / Japan

    三菱商事業務部ロシア担当次長 / Mitsubishi Corporation

研究テーマ:ロシア

研究会回数:5

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