2007年10月10日 00:00 〜 00:00
杉本侃・元日本経団連日本ロシア経済委員会事務局長「ロシア」4

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会見リポート

長期的な対ロ・エネルギー戦略を

石川 一洋 (NHK解説委員)

杉本さんは日露経済協力、とりわけシベリア・極東での日露エネルギー開発の生き字引である。サハリン1、東シベリアのヤクーチア天然ガス開発、多くの巨大プロジェクトが実はソビエト時代の70年代に動き出そうとしていた。杉本氏はその時代を日ソの蜜月時代だったと表現する。

ヤクーチアの天然ガス田開発、東シベリアからパイプラインで天然ガスを太平洋岸まで運び、液化天然ガスで日本とアメリカにそれぞれ年間75万トンの液化天然ガスを輸出するという壮大な計画である。石油と天然ガスの違いはあるものの今の太平洋パイプライン計画の先駆けと言えるだろう。またサハリン1もその当時、まず77年に原油の埋蔵、続いてさらに有望な天然ガスの存在が確認された。が、どちらのプロジェクトもソビエト時代、動き出すことはなかった。

ヨーロッパでは同じ頃ソビエトの西シベリアからパイプラインで天然ガスを当時の西独などヨーロッパに供給する世紀の締結が契約され実現した。杉本氏は悔しさとともに東のプロジェクトが実現しなかった要因としてソビエトのアフガニスタン侵攻など国際情勢の激変もあるが、ソビエト、その後のロシアに対する日本国内の無関心、戦略のなさを指摘する。

質疑応答では異論も出たが、杉本氏の報告で最も注目を集めたのはロシアのエリート層の中国への見方である。杉本氏は中ロのエネルギー協力の多くは言葉だけに終わっており、具体化していないことを指摘して、その背景にはロシアの根強い中国警戒感、中国嫌いの感情を指摘する。

今、ロシアは極東、シベリア開発を国家プロジェクトとし、巨額な予算を投じようとしている。杉本氏は今回は、ロシアは本気であると指摘する。過去の経験を学び、ロシアの極東開発にどのように対峙するのか、政権交代の度に猫の目のように変わるこれまでの対ロ政策ではなく、腰を据えた長期的、かつ機動的な日本の対ロ戦略の必要性を強く感じた。

ゲスト / Guest

  • 杉本侃 / Tadashi Sugimoto

    日本 / Japan

    元日本経団連日本ロシア経済委員会事務局長 / Nippon Keidanren

研究テーマ:ロシア

研究会回数:4

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