2007年08月24日 00:00 〜 00:00
唐沢祥人・日本医師会会長

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会見リポート

国民皆保険を脅かす5つの危機

渥美 好司 (朝日新聞医療エディター)

小泉政権時代に加速した医療費抑制政策に何とか歯止めをかけようと、日本医師会はさまざまな提言を打ち出している。しかし、さきの参院選では日医の政治団体である日本医師連盟推薦の候補が落選し、痛打をあびた。

「医師の利益だけのために活動している団体という誤解がある。いくつもの中学・高校教科書に圧力団体の例として日医の名が出ている」と、唐沢氏は世間に流布しているイメージを払拭する必要性を強調する。

組織目標は「みな平等に医療を受けることができる国民皆保険制度の維持」。その実現を脅かす五つの危機をあげた。

まず二つの医師不足。お産を受け入れる医療機関が96年と05年を比べると27%減った。小児科を掲げる施設も減少傾向が続いている。過重労働のうえに、事故が起きると裁判になるケースが多発しているからだ。「無過失補償制度の制定や夜間の開業医による小児救急への対応などに力を注いできた」という。

三つ目が高齢化。75歳以上の3人に1人が独居か老老世帯になっている。「厚労省は12年度に医療療養病床を15万床まで減らす方針だが、医療・介護難民を出さないためには26万床は要る。在宅医療への移行は徐々にすべきだ」。

残る二つは世界水準との比較。日本のGDPに占める総医療支出の割合はOECD30カ国中18位。トップの米国の半分だ。人口1000人あたりの医師数はさらに下がって27位。「米国も金のない人には非常に過酷な国。5000万人近い無保険者がいる。日本の制度や予算にむだがないかを徹底的に見直したうえで、財源を消費税引き上げに求めることもある」。参院選の自民大敗でだれもが口が重い消費税に踏み込んだ発言をした。


ゲスト / Guest

  • 唐沢祥人 / Yoshihito Karasawa

    日本 / Japan

    日本医師会会長 / Chairman, Japan Medical Association

研究テーマ:記者研修会

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