2007年08月27日 00:00 〜 00:00
徳川恒孝・徳川記念財団理事長「著者と語る『江戸の遺伝子』」

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会見リポート

縦横の江戸時代論議

髙橋 正 (東京新聞出身)

4年前の江戸開府400年をきっかけに始まった「江戸ブーム」は、資源の有限性と環境保全に目覚めた世上の「エコブーム」にも乗って止まる所を知らず、徳川宗家の徳川恒孝(つねなり)さんがこの春書かれた『江戸の遺伝子 いまこそ見直されるべき日本人の知恵』(PHP研究所刊)も、刊行以来夏までに6刷を重ねている、と言う訳でこのほどクラブゲストに招かれた徳川さんだが、江戸を語るのにこの人ほどふさわしい御仁もあるまい。何しろ徳川18代目のご当主なのだから。

ご本の方は江戸の「本家本元」としてだけでなく、日本郵船勤務時代の海外体験を踏まえた国際的、世界史的視野に立つ縦横の江戸時代論議で、大らかな中にも巧まざるユーモアと風刺の利いた筆遣いで読ませるが、講演の語り口は「学習院ボーイ」らしく東京人独特のやや早口。

冒頭に如才なく理事長を務める徳川記念財団のPRもなさったが、本で述べた持論の中でも、士農工商の「封建的身分制度」の下での、世界に誇るべき教育制度の多様性と充実(武士の藩校、町人子弟の寺子屋と奉公制度、成人向けの私塾等々)、支配階級である武家の法治主義・能力主義・あるべき指導者像の尊重、それ故に武家は道義的に権力を保ち得たが、それ故にまた窮乏し、経済力は町民に移行したという、外国人には理解し難い史上稀な「ねじれ現象」、リサイクルと省エネで資源(自然)と人間のバランスを保った江戸社会の知恵を特に指摘。

その上で、手遅れにならぬうちに、こうした「日本らしさ」を表に出し、自信を持って日本型組織による経済社会、自然との共生社会を作って行くことが本当の国際貢献であろうと結んだ。260年の泰平を画した「鎖国」と「開国」のタイミングも絶妙な外交知見であったと。

ゲスト / Guest

  • 徳川恒孝 / Tsunenari Tokugawa

    日本 / Japan

    徳川記念財団理事長 / Chairman, Tokugawa Memorial Foundation

研究テーマ:著者と語る『江戸の遺伝子』

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