2007年07月06日 00:00 〜 00:00
池田明史・東洋英和女学院大学教授/中島勇・中東調査会上席研究員「中東ベーシック」19

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会見リポート

複雑変数─パレスチナ分断

安部健太郎 (日本経済新聞国際部)

6月に激化したハマスとファタハの武力衝突で、ハマス支配下のガザ地区と、アッバス議長の支持基盤ファタハ傘下のヨルダン川西岸に分断されたパレスチナ。事態が動いているさなかの7月6日に、中東情勢の専門家の分析を聞く会が開かれた。

ガザと西岸の分断が固定化されるのか、もとに戻るのかは焦点のひとつ。中島氏(右)は「今は両方の可能性があり結論を出すのは早すぎる。半年、1年後に先行きが見えてくる」との見方。ポイントは「ハマスが変わるかどうか」。

ハマスは昨年に政権に就いて以降もイスラエルの生存権を認めない姿勢を変えず、国際社会の経済制裁などを招いた。中島氏はファタハ系住民もいるガザについて、「続く耐乏生活で住民の我慢が限界を超えるか、ハマスが変わるかの競争になる」と、衝突再燃の可能性を指摘。だがハマス自体、話し合いを模索する勢力と武装勢力が混在し、内部統制がとれているわけではない。「ハマスの変化には時間がかかる」と見る。

池田氏はパレスチナ分断で、「状況は整理されたか、より複雑になったか」と問題提起。国際社会がファタハのみに対し経済制裁を解除し始めたことにも、「ファタハは一枚岩でない。そのような状態で資金が入ると、もとの利権闘争の繰り返しになるのでは」との見方を示した。「西岸にもハマスはおり、自爆テロなどが起きれば西岸がイスラエルに制覇される」と、「(分断で状況がすっきりしたという)極楽とんぼ的シナリオには懐疑的だ」と結んだ。

この日、両氏の話に共通していたのは、複雑な変数が多い同地域の展望の難しさと、混迷の深さだった。

ゲスト / Guest

  • 池田明史 / Akifumi Ikeda

    日本 / Japan

    東洋英和女学院大学教授 / Professor, Toyo Eiwa University

  • 中島勇 / Isamu Nakajima

    日本 / Japan

    中東調査会上席研究員 / Fellow, The Middle East Research Institute of Japan

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:19

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