2007年07月25日 00:00 〜 00:00
岡本智博・元統合幕僚会議事務局長「ロシア」2

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会見リポート

対イランMDはロシアと共に

折坂 浩史 (共同通信外信部次長)

東欧での米国のミサイル防衛(MD)計画や、ロシアの元情報機関員の毒殺事件などをめぐり、ロシアと米欧の対立が激化している。「新冷戦の到来」を懸念する声もある中、軍事的な側面から見て、ロシアにはどのように対応すべきなのか。

原油高に伴う好調な経済を背景に、2007年のロシアの国防予算は対前年比約23%増。豊富な予算を研究開発に当て、特に戦略核ミサイルと宇宙装備の充実を図っていると岡本氏は指摘する。

ブッシュ米政権が02年、MD計画推進のため、米ソが結んだ弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を失効させたことに対し、ロシアは戦略核の抑止力維持のため、大陸間弾道ミサイル(ICBM)のMIRV(多弾頭ミサイル)化の推進で対抗した。

また米国の衛星利用測位システム(GPS)を利用した軍備に対し、ロシアは同様のシステム、GLONASSを進め、宇宙における米ロの競争も進行中という。

さらに米国は今年に入り、イランのミサイルの脅威を理由に、かつてソ連の勢力圏だったポーランド、チェコでのMD計画を打ち出した。ロシアのプーチン政権は同国のミサイルを対象にした計画だと反発、欧州通常戦力(CFE)条約履行停止を発表し、欧州国境の飛び地カリーニングラード州に新たなミサイル部隊を配置すると警告している。

岡本氏はミサイル部隊の配備警告について、米ソの中距離核戦力(INF)廃棄条約の対象である中・短距離核ミサイルの復活の危機だと指摘。「CFE条約やINF廃棄条約など、両国が積み上げてきた軍縮努力を失うような方向に米欧は走るべきではない」と強調し、イランへの対応がMDの目的であるならば、ロシアを計画の仲間に入れる形で進めるべきだと主張した。

ゲスト / Guest

  • 岡本智博 / Tomohiro Okamoto

    日本 / Japan

    元統合幕僚会議事務局長 / Former Secretary General, Joint Staff Office

研究テーマ:ロシア

研究会回数:2

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