2007年06月29日 00:00 〜 00:00
上村幸治・獨協大学教授「著者と語る『周恩来秘録』」

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会見リポート

毛に付き従った周恩来

藤村 幸義 (日本経済新聞出身)

端正な顔立ち、優雅な振る舞い、そして見事なさい配ぶり。我々の知る周恩来の馴染みの姿である。とりわけ日本には周恩来と握手して、ぞっこん惚れ込んだ政治家や経営者などが少なくない。

ところが『周恩来秘録上下』(高文謙著)を翻訳した上村幸治・獨協大学教授によると、この本では我々の知らなかった周恩来が無数に出てくる。優柔不断で小心者で、保身のために狡猾に立ち回る周恩来のもう一つの知られざる姿である。

中国を混乱に陥れた文化大革命でも、もし周恩来が毛沢東を支持していなかったならば、全く違った展開になっていたかもしれない、と上村氏は指摘する。文化大革命の発動に反対するチャンスはあった。元老達はいっせいに毛沢東に抗議したが、周恩来は先行き混乱が増すと知りながら、毛沢東にひたすら付き従っていった。

林彪の死後、周恩来はナンバー2に躍り出て、米中国交回復という大偉業を成し遂げる。西側の外交界とマスコミはこぞって「周恩来外交」の見事さを絶賛するが、これが逆に毛沢東の猜疑心をもたげさせてしまった。周恩来は党中央委員会で厳しく批判される。周恩来はこのころ膀胱がんに冒されるが、毛沢東は手術を認めなかった。

いよいよ臨終と言うときに、周恩来は毛沢東の作った詩を側近に読ませた。そして毛沢東を讃える歌「東方紅」を口ずさんだというのだ。あれほど毛沢東から痛めつけられながら、なぜそこまで毛沢東に付き従うのか。周恩来には複雑で分かりにくい面が多い、と上村氏は解説する。

本書には周恩来と鄧小平や林彪などとの関係についても、従来の常識を覆す事実が多く盛り込まれている。激動の中国現代史は、随所で修正の必要がありそうだ。

ゲスト / Guest

  • 上村幸治 / Koji Kamimura

    日本 / Japan

    獨協大学教授 / Professor, Dokkyo University

研究テーマ:著者と語る『周恩来秘録』

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