2007年06月27日 00:00 〜 00:00
米田壯・警察庁組織犯罪対策部長

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会見リポート

義理人情から「金」と「情報」へ

長久保宏美 (東京新聞社会部)

「これで日本にも『経済警察』ができた」…。今年4月、犯罪収益の疑いのある取り引きの届け出情報を集約、分析する資金情報機関(FIU)が金融庁から警察庁に移管されたことを受けて、ある同庁首脳は、こう誇らしげにつぶやいた。マネーロンダリング(資金洗浄)の疑いのある取り引きを銀行や不動産会社が把握した場合、届け出が義務づけられたのだ。その情報を警察が捜査に使う。

米田氏は、現代の暴力団の行動原理は金と情報だという。義理でも人情でもない。組長さえ、高度に組織統制化された中で「機関の一部」なのだという。暴力団や関連企業が大企業に接近したり、証券市場の自由化を逆手にとって資金源を獲得するためには高度な経済・法知識が必須で、こうした人材を確保できない組は衰退の一途をたどるという。米田氏はこれを「しのぎの高度化」と表現した。

組が弱小で通勤電車で組事務所に通う組員もいる一方で、有力な組幹部は襲撃を警戒し10数人のボディーガードを連れ、護衛の高級車の列を重ねて移動するという。力を持てば持つほど敵は増える。生命を守るために警護がいる。銃もいる。だから常に金が必要になる。

改正を経た暴力団対策法を中心とする警察の対策は、山口組を最大勢力とする指定暴力団の顕在化した組織暴力を封じ込めてきた。抗争事件は昨年ゼロだった。

しかし、米田氏のいう「暴力団の本質」とは、組の存立のためには殺人も肯定する「暴力装置」を内在化した集団ということにほかならない。それが今、関連企業を「上場」させたり、一般投資家を食い物にするツールを持ちえることに、米田氏は危機感を持つ一方、FIUを持った警察がそれに挑んでいく必要があると結論づけている。

ゲスト / Guest

  • 米田壯 / Tuyoshi Yoneda

    日本 / Japan

    警察庁組織犯罪対策部長 / National Police Agency

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