2007年06月13日 00:00 〜 00:00
ジャード・アブ・アムロ・パレスチナ外相

申し込み締め切り

会見リポート

有効な処方箋なし

伊藤 仁志 (共同通信外信部)

パレスチナでは、イスラム原理主義組織ハマスが武力を背景にアッバス自治政府議長の支持基盤、ファタハを圧倒しガザ地区を制圧した。これまでハマスとファタハの仲介役を務めてきたアブ・アムロ外相の訪日は、まさに両派の対立激化と重なった。

6時間の時差があるため、記者会見当日の13日は現地とやり取りを繰り返し、就寝は早朝だったといい、疲れ切った表情で「日本のパレスチナ支援」に対する謝辞を述べた。

話が内戦状態のガザ地区情勢に及ぶと、「イスラエルによる経済的、政治的な封鎖」「国際社会による資金援助停止」により貧困状態に置かれたパレスチナ民衆の不満がハマス、ファタハの内部対立を助長していると強調。一刻も早いイスラエルとの和平プロセス再開の必要性を訴えた。

連立内閣の維持、欧米の支援再開が事態収拾への鍵だと述べた外相だったが、会見翌日にはハマスがガザ地区を制圧、連立内閣は崩壊し、外相在任期間はわずか3カ月となってしまった。

しかも、ハマスを排除して発足した緊急内閣は米欧やイスラエルから歓迎され、ブッシュ米大統領はイスラエルのオルメルト首相との会談でパレスチナ支援再開を表明する皮肉な結果となった。

だが、「臭いものにはふた」的な発想でハマスを排除しても問題の根
本的な解決にはつながらない。国際社会はパレスチナの窮状も、独立国
家樹立が最終目標だということも十分理解しているはずだが、対話路線
を重視するアッバス議長に肩入れするだけで、混迷打開に向けた有効な
処方箋は示せていない。

ゲスト / Guest

  • ジャード・アブ・アムロ / Ziyad Mahmoud Abu-Amr

    パレスチナ / Palestine

    外相 / Foreign Minister

ページのTOPへ