2007年06月01日 00:00 〜 00:00
ダグラス・トレルファ・玉川大学准教授「アメリカの底流」6

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会見リポート

教育改革を複眼的に見る

中西 茂 (読売新聞編集委員)

米国中西部のミシガン州生まれ。慶応大学への留学経験を持ち、1980年代には米教育省に「日本の教育から学んで来い」と派遣された。さらに、ロサンゼルスで教育改革も担い、現在は玉川大学准教授。日米の教育改革を比較して語るには、まことにふさわしい経歴だ。

研究会は日本語で行われ、米国の教育委員会制度から、教育委員会と連邦政府との関係、教員養成、教育理念、ブッシュ政権のノーチャイルド・ビハインド法(子ども置き去りゼロ政策)まで解説が進んだ。

その中で印象に残ったことのひとつが、「アメリカの教育システムは、常にゆとり教育になっている」という発言だった。「日本のように高校に進む試験もなければ、個別の大学入試があるわけでもない」。日本の事情をよく知る外国人の指摘に、そういう見方もあるのかと気付かされた。

一方「アメリカは、個人の特質を尊重し、個性を伸ばす教育。日本は、集団を重んじ、単一性を尊重し、他の人の評価を重視する教育」と分析されると、「確かに今も、そうではあるが……」と考えてしまう。日本の教育には、個性尊重が進みすぎたという考え方があるからだ。

日米の教育をめぐっては日本は米国に、米国は日本に近づこうとしていると、以前から言われてきた。この話には「そろそろ、太平洋のどこかで、すれ違うのでは」という〈落ち〉が付く。が、そんな掘り下げた分析には時間が不足したようだ。

ともあれ、研究会の日はちょうど、安倍内閣の教育再生会議が、「ゆとり教育見直しの具体策」を柱のひとつにした第2次報告をまとめた日だった。教育改革を、複眼的に眺めることの大切さをあらためて思い出させてもらった。


ゲスト / Guest

  • ダグラス・トレルファ / Douglas Trelfa

    米国 / USA

    玉川大学准教授 / Associate Professor, Tamagawa University

研究テーマ:アメリカの底流

研究会回数:6

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