会見リポート
2007年05月30日
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村上陽一郎・国際基督教大学教授「文明史としてみた科学報道50年」
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会見詳録
会見リポート
20世紀後半に科学が『変質』
柴田 鉄治 (朝日新聞出身)
ひとくちに科学技術といっても、科学と技術は異なる道を経て発展してきた。技術は常に社会とともにあり、高級技術者にせよ職人にせよ、組織化された職能団体の外に必ずクライアントが存在した。たとえば、建築家と施主の関係のように。そして、クライアントに対する責務があった。
それに対して、19世紀の後半に誕生した科学者集団は、自らと仲間だけの共同体で自己完結しており、クライアントはなく、行動規範は自己と同僚に対する責任のみであった。外部社会とのつながりは、芸術活動などへの政府・財団などからの支援と同じ種類のものにすぎなかった。
ところが、20世紀の後半から科学が大きく変質したのである。科学の成果が社会を動かす技術に取り込まれ、科学者にクライアントが生まれたのだ。
ノーベル賞は20世紀とともに始まった褒賞制度だが、たとえば、物理学賞で見た場合、20世紀の前半は、アインシュタインやプランクら純粋理論の大家がずらりと並んでいた。だれそれの方程式、だれそれの常数などと、名前付で呼ばれることが最大の名誉であり褒賞である時代が続いた。
それに対して20世紀の途中からは、科学者のカロザスがデュポン社に入ってナイロンを開発したようにまず産業界が、次いで原爆開発のマンハッタン計画のように国家・政府が、科学者のクライアントになったため、科学が様変わりした。
科学者に新たな責任が生じたこの変質に、科学ジャーナリズムは対応しきれているかどうか。専門家と非専門家をつなぐ調整役は必要であり、科学者とクライアントと一般生活者と、その三つ巴の中で「第三者」としての科学ジャーナリズムに期待するものは大きい。
ゲスト / Guest
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村上陽一郎 / Murakami Yoichiro
日本 / Japan
国際基督教大学教授 / Professor, International Christian University
研究テーマ:文明史としてみた科学報道50年