2007年03月26日 00:00 〜 00:00
平松茂雄・元杏林大学教授「中国」5

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会見リポート

断絶がない中国軍事政策

岩城 浩幸 (TBS解説・専門記者室長)

北京駐在として赴任した時に中国の高官から「中国共産党は中国の自民党です」と言われて面喰ったことがある。「中国共産党を見る時、マルクス主義や共産主義にとらわれず、明瞭な戦略意識を持った政治集団と見るべき」という平松氏の設定を聞いた時、その時のことを思い出した。
中国が国際社会の批判を無視して最後の核実験を行ったのが96年。合計45回。なぜ、そうまでして核開発をするのだろう。

平松氏は、出発点は「毛沢東の戦略意識」であり、「建国間もない1955~56年頃、核の時代に入ったばかりの時期に、核戦争の意味を理解して、“政治兵器”としての核保有を決断した」と分析する。

そして64年に初の核実験を行った後、70年の人工衛星打ち上げで核のキャリアとしての中距離ミサイルを手にし、80年にはフィジー沖に向けてICBMの実験を行うなど、初めからアメリカを射程に入れることを目指していたという。

また海洋進出、有人宇宙飛行、ミサイルでの衛星破壊など、一見バラバラに見える事象が、すべて核開発に連動した一本道の中にあるという。

中ソ対立でソビエトの支援をあてにできない状況で、中国研究者や軍事の専門家の多くは、中国が早期に単独で核開発を行うことに懐疑的だったというのだが、現実はそうではなかった。そうした「常識」への違和感から、平松氏の独特の分析視座が生まれたのだろう。

こうして、いわば政治の側面から軍事を分析してみると、変動や極端な政策転換の多い中国でも、こと軍事に関する限り、「断絶はない」という。

温家宝首相訪日では、軍事交流も話題になるといわれている。その後ろに毛沢東が重なって見える瞬間があるかもしれない。

ゲスト / Guest

  • 平松茂雄 / Shigeo Hiramatu

    日本 / Japan

    元杏林大学教授 / Former professor of Kyorin University

研究テーマ:中国

研究会回数:5

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