会見リポート
2007年02月28日
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岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長
会見詳録
会見リポート
「論議の場」─メディアの役割
吉本 明美 (共同通信科学部)
危機感をあおり過ぎるのも、安心させ過ぎるのもよくない。大流行したら大変だと言われている新型インフルエンザの記事を書く時にいつも悩むのは、どんな書き方をすれば現状を正しく反映した「適度な危機感」を表現できるかということだ。
感染症の専門家も人により危機感の表し方が違うが、バランス感覚に定評がある岡部氏のスタンスは、真ん中よりやや「火消し」側か。
研究会はインフルエンザのイロハから最近の世界情勢、厚生労働省が最近まとめた、新型発生時の早期対応に重点を置いた行動指針案の概要まで、ていねいにカバーされていた。聞く人によって面白いと思う個所は異なりそうだが、私が個人的にメモしたのは次の2点。
まず新型への変異が懸念されるH5N1型ウイルスは、人での致死率は約60%だが、大流行する場合には致死率は大幅に下がるとみられること。ただし具体的な予想は難しく、数%以上(毎冬流行するインフルエンザの致死率の10倍以上)程度と想定されること。もう1つは「鶏肉や卵からの感染はない」というのは言い過ぎで、病気の鶏が市場に出回るような状況では、理論的に感染の可能性は否定できないという点だ。
行動指針案は計13分野にもわたるので内容を要約するのは難しいが、よく分かったのはまだまだ国民を巻き込んだ議論が必要な「未完成品」だということ。例えば新型の流行が確認されてから最初のワクチンができるまでに半年から1年かかるが、限られたワクチンを誰に先に打つか。指針案は複数の考え方を示したが、専門家だけではとても決められない。明らかな不利益を伴うだけに100%のコンセンサスも難しい。岡部氏は、政治的な決断の必要性に言及したが「論議の場」としてのメディアが、どう取り組むかも問われる。
ゲスト / Guest
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岡部信彦 / Nobuhiko Okabe
日本 / Japan
国立感染症研究所感染症情報センター長 / Infectious Disease Surveillance Center
研究テーマ:新型インフルエンザ