2007年02月19日 00:00 〜 00:00
桜井啓子・早稲田大学教授 「著者と語る『シーア派』」

申し込み締め切り

会見リポート

シーア派の実像を解説

藤原 和彦 (読売新聞出身)

優れた専門家の話には「もうかった」と思うことが多い。

桜井教授の話にもそう思ったひとつが、昨年2月イラク・サーマッラーで起きたシーア派アスカリ廟の爆破に関する解説だった。このテロを契機にイラクが内戦状態に陥ったことはよく知られている。

桜井教授は、アスカリ廟の爆破にシーア派が激怒した理由について、同廟の破壊により、シーア派が救世主と見なす第十二代イマーム(最高指導者)が再臨できなくなると懸念したためだと語った。正直言って、初めて聞く解説だった。

第十二代イマームは少年時代の西暦874年、突然失踪したとされる。これについて、 桜井教授は著書 『シーア派』30ページに、 こう書いている。

「結局第十二代イマームは、信徒と直接に触れ合うことができない『お隠れ』(ガイバ)状態に入ったという解釈が受け入れられていった(中略)。『隠れイマーム』となった第十二代イマームは、終末直前に救世主(マフディー)として再臨して、人びとをこの世の悪から救済してくれると信じたのである」

さらに、31ページには「シーア派によれば、サーマッラーにある第十一代イマームの墓廟の下には洞穴があり、その洞穴のなかの一室には扉があり、この扉の向こうの部屋の隅に、第十二代イマームが消えた泉があるという。人びとはこの泉に集まり隠れイマームの再臨を祈る」とある。

ここで言う第十一代イマームの墓廟こそアスカリ廟だ。つまり、シーア派は同廟の爆破によって泉も破壊され、救世主の再臨の出口が塞がれたと懸念し、激怒したというわけだ。

さて、会後半の参加者の質問も熱の入った内容が続いた。桜井教授の話に参加者の知識欲が強く刺激されたからに違いない。まさに「もうかった」有意義な会だった。

ゲスト / Guest

  • 桜井啓子 / Keiko Sakurai

    日本 / Japan

    早稲田大学教授 / Professor, Waseda University

研究テーマ:著者と語る『シーア派』

ページのTOPへ