2007年02月07日 00:00 〜 00:00
高橋祥友・防衛医科大学校教授「著者と語る『自殺予防』」

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会見リポート

報道の仕方で群発自殺誘発

丸尾 寿一 (フジテレビ出身)

「メディアの報道の仕方が群発自殺を誘発している」という高橋教授の厳しい指摘は、かつてテレビ報道に携わっていた私にはショックだった。

高橋教授は、一人の自殺が他の複数の自殺を引き起こす現象「群発自殺」がメディアによって引き起こされたと指摘する事例を、1986年に起きた歌手の岡田有希子の自殺報道から昨年10月の北海道滝川市の小学生のいじめ自殺報道に至るまで新聞記事や写真、テレビ映像など具体的な例を示しながら説明し、内容は説得力のあるものだった。

「自殺者がでた学校で校長が生徒を集めて『命を粗末にするな』と説くことは群発自殺を引き起こす恐れがあり非常に危険」

「精神科医としての自分の体験では、子どもが助けを求めているサインに親が気づかず、学校の先生が見つけて通報してきた例が、これまでに報道されたいじめ自殺の件数の数十倍はあった」

という私にとっては意外だった指摘もあり、自殺報道では取材する側の使命感や思い込みだけで動くと危険だという認識を深めた。

「遺書の内容を報道するのは非常に危険」という指摘にはテレビの会員から「報道しないと、いじめの加害者の存在を隠すことになるのでは」という疑問も出されたが、OBの会員からは「先生の話を是非、現場の若い記者たちに聞かせたい」という意見があった。

メディア、特にテレビが社会に与える影響が非常に大きくなっているのは周知の事実であり、その巨大な媒体力が群発自殺を誘発しているとしたら社会問題である。

自殺報道についてメディア自身が専門家の指摘に耳を傾け、取材・報道の仕方を検証してガイドラインを作るようにしていかないと、将来外部から規制されたり、遺族から加害者として訴えられる日が来るのではないかという危惧をいだいた。

ゲスト / Guest

  • 高橋祥友 / Yoshitomo Takahashi

    日本 / Japan

    防衛医科大学校教授 / Professor, National Defense Medical College

研究テーマ:著者と語る『自殺予防』

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