2006年12月01日 00:00 〜 00:00
モハメド・エルバラダイ・IAEA事務局長

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会見リポート

“核の番人”の自負と危機感

小林 義久 (共同通信外信部)

北朝鮮の核実験から約2カ月後の訪日。記者会見での質問も北朝鮮の核問題に集中した。「六カ国協議の現状をどうみるか」「北朝鮮への査察準備は」。

国際原子力機関(IAEA)は2002年12月に査察官を北朝鮮から追放され、手も足もでない状況が続く。それでも事務局長は同問題に積極的にコミットしてきた。在ウィーンの北朝鮮大使館との非公式接触、日本、米国など関係国への働き掛け…。「私はこの問題が核不拡散体制にとり最も緊急性を持つと警告してきた」。1990年代から問題に取り組んできた「核の番人」の自負がのぞく。

しかし、IAEAなどの努力にもかかわらず、北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)脱退宣言、核保有宣言、そして核実験と事態をエスカレートさせてきた。「問題解決のためにはエネルギッシュに早めに手を打たねばならない」。事務局長の言葉からは強い危機感がひしひしと伝わる。

IAEAと事務局長は一昨年、核不拡散への貢献によりノーベル平和賞を受賞した。北朝鮮やイランなど相次ぐ核問題、一方で進まぬ核軍縮。IAEAには揺らぐ核不拡散体制の立て直しに向けた取り組みが期待されるが、事態はあまりに深刻で解決は容易ではない。

ウィーン特派員時代に数え切れないほどの事務局長の会見に出席した。聞き取りにくい英語でも最後まで身を乗り出すようにして聞き、どんな質問にも丁寧に答える誠実な態度は変わらない。

当時、IAEA報道官は「本当はシャイなんだけど、最近はマスコミ対応にもだいぶ慣れた」と笑っていたが、今回の会見での堂々たる応答ぶりはもはや国際社会のキーパーソンのそれだった。

ゲスト / Guest

  • モハメド・エルバラダイ / Mohamed ElBaradei

    エジプト / Egypt

    IAEA事務局長 / Executive Director, IAEA

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