2006年11月13日 00:00 〜 00:00
アレクサンドル・ロシュコフ・駐日ロシア大使

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会見リポート

お別れ会見─溝の大きさに無念さも

石郷岡 建 (毎日新聞出身)

その昔、ゴルバチョフソ連大統領は「日本とソ連は、お互いをそれほど必要としていない。だから、一生懸命に努力しないと関係は疎遠になる」と語ったことがある。

この言葉を頭においての発言だったのかどうか。「日露はお互いを必要としている」と、大使は何度も繰り返した。

まもなく、「寒い冬のモスクワへ帰任する」。だから、事実上、最後のお別れ会見だった。感情をあまり表に出さず、クールな発言で知られる大使だが、どことなく寂しさと虚無感が伝わってくる会見でもあった。

大使は日本語が話せず、もともと日本を専門としたわけでもない。それだけに特別の覚悟もあったのだろう。赴任の際に「今までとは違った角度から観察し、違った意見をまとめるチャンスだ」と思ったという。

日本各地を訪問し、日本の印象は大きく変わった。日本の「弱点」も見た。そして、日露間の経済交流は在任中に飛躍的に伸びた。「未来については楽観的な見通しを持っている」と説明した。

だが、そのあとで、大きくため息をついた。「平和条約は何の進展もなかった……私は不満足だ」と述べた。確かに、領土交渉はほとんど動かなかった。小泉政権が対露関係に関心を示さず、外務省が鈴木宗男議員のスキャンダル事件に巻き込まれたことが大きい。大使自身も身動き取れなかったのが実態だろう。

「日露の歴史はバラよりもトゲが多い」「歴史の記憶はなかなか消えない」「日露交渉というのは両国の外交官にとって破滅的な状況にある。なぜならば双方の世論が問題解決を支持していないからだ」

繰り言のような発言が続いた。結局、大使の総括は、日露の溝は大きかった、という無念さだったのかもしれない。

ゲスト / Guest

  • アレクサンドル・ロシュコフ / Alexandr Losyukov

    ロシア / Russia

    駐日ロシア大使 / Ambassador to Japan

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