2006年11月09日 00:00 〜 00:00
ヒュー・リチャードソン・駐日EU大使

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会見リポート

EU拡大のソフトパワー

山口 光 (共同通信社長室)

来年1月1日のブルガリアとルーマニアのEU加盟によって加盟国27カ国、総人口が5億人に迫る欧州連合(EU)の歴史的な第5次拡大のプロセスが完了する。欧州委員会は今後のEU拡大政策に関する戦略報告を11月8日に採択、トルコや、残る西バルカン諸国などの加盟交渉の進捗状況を洗いなおし、新たな拡大に向けたガイドラインを決めた。

8月に着任した新任のリチャードソン駐日EU代表部大使は会見で「新たな拡大のコンセンサスを再構築したものであり、それは、平和と民主主義、繁栄、法治体制の整備、自由というEUの戦略的価値観を共有することだ」とこの「戦略文書」の意義を強調した。

総務や政策調整の主要ポストを歴任、EUの統合政策を長く推進してきただけに、今後の拡大は「価値観を守る能力を強化し、統合の条件を遵守、新たな負担に耐える体制の整備が必要で、またEUの市民に対する情報提供とコミュニケーションの充実が急務」と訴える。

欧州とイスラム世界の“かけ橋”としての役割が期待されている候補国トルコの加盟交渉について大使は「政治改革が減速、表現の自由や刑法301条(国家侮辱罪)の規定問題、人権、文民統制などが不十分で、改善が必要」としながらも「トルコはNATO加盟以来、50年以上も欧州とイスラム世界との架け橋。EU域内には2千万以上のイスラム教徒がおり、トルコがフェアな改革を進め、人権、法治、民主というEUの価値観を共有して加盟へのプロセスを進展させてほしい」と期待を示す。

「日本の国民にも、人、モノ、資本の移動が自由になるEU拡大のソフトパワーをもっと知ってほしい」と熱く訴えた。日本駐在は1988年以来、二度目。旅が好きで日本の山や自然を愛し、山岳スキーをこなす。

ゲスト / Guest

  • ヒュー・リチャードソン / Hugh Richardson

    EU / EU

    駐日EU大使 / Ambassador to Japan

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