2006年11月01日 00:00 〜 00:00
宮家邦彦・立命館大学客員教授「中東ベーシック」17

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会見リポート

民主化と安定─同時達成は不可能

小倉 孝保 (毎日新聞外信部)

恒例の研究会「中東ベーシック」は今回、宮家邦彦・立命館大学客員教授を迎え「米国の対中東政策」と題して開かれた。イラク問題が最大の争点となった米中間選挙(11月7日)直前でもあり、時期、テーマともにタイムリーな研究会となった。

宮家氏はまず、「これまでの『中東ベーシック』では、他の専門家と一緒に話をさせてもらった。今回は一人。やっと独演会が開けるようになった」と座をなごませた。

米国の中東政策の総論として、宮家氏は、①イスラエルの安全保障②湾岸地域からの市場価格での原油確保─の二つを車輪のごとく動かしてきたが最近、①を重視したことでバランスが崩れた。また、「テロとの戦い」「中東の民主化」といった新たな輪が生まれ、混沌とするようになったと説明した。

各論に入り、イスラエルとイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラが衝突したレバノン情勢について、宮家氏は「徹夜マージャンの論理」で説明。「勝っている者は早く終わって帰ろうとするが、負けている者は必ず『もう半チャン』と言う」。つまり、先の紛争で政治的に勝利したヒズボラよりも、イスラエルが「もう一勝負」してくる可能性が高いという分析だ。

イランの核問題に触れた後、イラク情勢について宮家氏は、「米国がタイム・テーブルを作ることは抵抗勢力を元気づける。3分割すればさらに不安定化する。米軍の完全撤退は内戦への道」と、どの安定化案も現実的ではないと断言。

最後に、「民主化と安定を同時に達成することは不可能。米国は民主化をあきらめる時期に来ている」と厳しい見方を示した。外交官として中東、米国双方で勤務した経験を持つ同氏ならではの充実した研究会だった。

ゲスト / Guest

  • 宮家邦彦 / Kunihiko MIYAKE

    日本 / Japan

    立命館大学客員教授 / guest professor of Ritsumeikan University

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:17

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