2006年10月30日 00:00 〜 00:00
国分良成・慶応大学東アジア研究所所長「中国」1

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会見リポート

日中首脳会談と政治の激震

清水 美和 (東京新聞論説委員)

「一種のクーデターにも近い巨大な政変だった」。国分良成教授は9月末に起きた上海市の陳良宇書記の解任劇をこう表現した。

陳書記は、日本や台湾をめぐる政策で胡錦濤政権に干渉を繰り返してきた江沢民前総書記率いる「上海閥」が、密かに次期最高指導者にも想定していた人物。

10月8日に突然、実現した安倍晋三首相の公式訪中、日中首脳会談の背景が「政治の激震」との関連で解き明かされていく。

「日中関係の改善は胡主席の強力なリーダーシップで上から行われた。反発はものすごいが、今のところ抑えつけられている」

圧巻は国分教授自身が中核メンバーの新日中友好二十一世紀委員会の会合に触れたくだりだ。安倍訪中の10日後に中国・青島で開かれたが、「会議の最初と終わりで中国側の反応が変わっていった」という。

当初は、安倍訪中時に発表された日中共同プレス発表に「靖国」や「台湾」が明記されていないことに、不平を鳴らしていた中国側が、これを評価し、今後の日中関係の出発点とすべきだとする日本側に次第に同調していく。胡主席の方針が浸透していくのを目撃した。

国分教授は既に紹介の必要がない中国政治・外交研究の第一人者。日中関係も二国間関係だけでなく、米国をはじめ世界の中でとらえる広い視野が特徴だ。研究材料は文献資料に限らず、各国の外交官、研究者との幅広い人脈を通じた先端的な情報も含まれている。講演の中にも各メディアが伝えていない「独自ダネ」が各所に盛られていた。

「北朝鮮の核実験に関して六カ国協議の失敗を胡政権の責任にする批判が反対勢力から強まっている」

胡政権の多難さを強調する言葉が頭に焼きついた。

ゲスト / Guest

  • 国分良成 / Ryosei KOKUBUN

    日本 / Japan

    慶応大学東アジア研究所所長 / Professor,Keio University

研究テーマ:中国

研究会回数:1

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