2006年10月10日 00:00 〜 00:00
渡部潤一・国立天文台天文情報センター長「天文学のいま」

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会見リポート

宇宙の輪廻転生

田口 五朗 (NHK科学文化部長)

この夏、天文のニュースが新聞やテレビを大いに賑わせた。冥王星が惑星から外され、9個あった惑星が8個に減ってしまったのだ。舞台は国際天文学連合。その惑星定義委員会の委員を務めた渡部さんが「天文学のいま」を軽妙な語り口で解きほぐしてくれた。

137億年前にビッグバンと呼ばれる大爆発によって生まれたとされる宇宙。その中で輝いている星々はまずは宇宙に浮かぶ塵とガスから誕生し、成長しながら核融合反応を起こして光り輝くようになる。

こうした赤ちゃん星を見ることもできる。オリオン大星雲を照らし出している4つの星は生まれて約200万年、それでも人間に例えると生後1週間の赤ちゃん星なのだという。

成長した若い星は青く燦然と輝くが、核融合のエネルギー源である水素が尽きてくると表面温度が下がって赤くなり、最終的には爆発を起こして死に至る。ところが、この時、星は自ら作った炭素や窒素、酸素など様々な物質を宇宙にばらまき、こうした星のかけらが次の世代の星のもとになっているというのだ。

46億年前にできた私たちの太陽系も実は前の世代の星たちが作った物質を受け継ぎ、地球は幸運にも生命をはぐくめる絶妙の環境に作られた。しかし、地球も50億年後には爆発して死を迎え、まき散らされた物質は次の世代の星に引き継がれることになる。渡部さんは「宇宙は星を媒介にした物質の輪廻転生が繰り広げられている」と言う。

2061年8月にはあのハレー彗星が再び地球に接近するという。半世紀も後のことなので、これを見ることはできないであろう。でも地上の喧騒をしばし忘れ、久しぶりに夜空を仰いで渡部さんが勧める「星空浴」を楽しんでみようと思う。

ゲスト / Guest

  • 渡部潤一 / Junichi Watanabe

    日本 / Japan

    国立天文台天文情報センター長 / national astronomical observatory of Japan

研究テーマ:天文学のいま

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