2006年07月20日 00:00 〜 00:00
アンヘル・グリア・OECD事務総長

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会見リポート

デフレ脱した日本経済

鈴木 美勝 (時事通信解説委員)

2006年OECD対日経済審査報告書発表のためにセットされた記者会見。グリア事務総長は、「日本のすばらしい経済パフォーマンスにお祝いを申しあげたい」と切り出した。

18カ月前の05年対日審査報告書は、経済成長率の下落、銀行貸出と地価の継続的下落、正規雇用と賃金の減少などを指摘、日本経済が1990年代初頭の資産価格バブルの崩壊がもたらした「負の遺産」に取り付かれていると分析していた。

だが、グリア氏は、今や日本は「拡大局面の強さと持続性によって、資産価格バブルの負の後遺症をほぼ克服することができた」「『失われた10年』と長期にわたるデフレを脱却した」と言明、日本経済を賞賛した。

そして、転換期における挑戦すべき課題として、①ゼロ金利政策からの脱却と高水準の財政赤字からの脱却という「二重の出口政策」②地域貿易協定を通じた貿易自由化の遅れ克服③次期政権での規制改革継続─の3点を挙げた。

これに関連して注目したいのは、06年対日審査報告書が指摘している日本経済の陰の部分。具体的には、労働市場における二極化の拡大だ。報告書は、「10年前に全労働者の19%だった非正規労働者の割合は30%以上に増加」「パートタイム労働者の時間当たり賃金は平均してフルタイム労働者の40%にすぎない」と強調。所得格差や貧困の拡大を反転させる重要な鍵は、労働市場の二極化の緩和だと警告しているが、グリア氏の発言のトーンは、まろやかに過ぎた気もする。

グリア氏は、事務総長選挙で激戦を勝ち抜いたメキシコ出身の財政のプロ。財務相時代には、豊富な人脈を駆使し、金融危機克服に尽力した。50回以上の訪日歴があり、内海孚、行天豊雄各氏ら日本の歴代財務官とは旧知の仲。英・仏・独・イタリア・スペイン・ポルトガルの6カ国語を操る正真正銘の国際人だ。


ゲスト / Guest

  • アンヘル・グリア / José Ángel Gurrí

    OECD / OECD

    事務総長 / Secretary General

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