会見リポート
2006年07月19日
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山口仲美・埼玉大学教授「著者と語る『日本語の歴史』」
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会見リポート
日本語の歴史を知る意味
松永 太 (東京新聞出身)
山口教授は立ったまま、大学の講義並みのレクチャーをしてくれたが、笑みをたたえてゆっくりと歯切れよく、分かりやすいと好評であった。
識字率が世界でもトップクラスの日本人が、なぜ漢字が読めないか、と言われると面食らう。でも、行火・暖簾・炭団と例示されると、戦前の暗記教育を受けた世代でもとっさには書けない。大学生ではちゃんと読める人は少ないだろう。まして、人名に至っては読み方が多岐で、外国人は日本人同士なのにと不思議がるという。星凛(あかり)、清楓(さやか)、聖瑛(あきら)となると、名付け親と本人しか読めないに違いない。音と訓の範囲内で名付けを行おう、と著者は提唱する。
古い漢字カナ交じり文の1例として挙げた『今昔物語』の引用は、
女袴ノ股立ヲ引開テ見スレバ、股ノ雪ノ様ニ白キニ、少シ面腫タリ。…左右ノ手ヲ以テ毛ヲ掻別テ見レバ専ニ可慎キ物也。
と、美女が陰部の腫瘍を医者に診てもらう情景がポルノまがいに描写されている。これは日本記者クラブ向けサービスとか。
パソコンの普及に伴い字が書けなくなった風潮も、 質疑で取り上げられた。先生は「時代に逆らわない。読めればよいし、 パソコンの文字から選べればよい」と達観し、「日本語の歴史を知る意味は、 これからの日本語をどうすべきなのかを知る時の指針になる」 と著述の狙いを語った。
ゲスト / Guest
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山口仲美 / Nakami Yamaguchi
埼玉大学教授 / Professor, Saitama University
研究テーマ:著者と語る『日本語の歴史』