2006年07月14日 00:00 〜 00:00
長谷川毅・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授「著者と語る『暗闇-スターリン、トルーマンと日本降伏』」

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会見リポート

日本外交はアヘン中毒だった

松浦 茂長 (フジテレビ出身)

緻密で重厚な長谷川教授の語り口だが、ときどき“見出しにぴったり”の強い言葉が飛び出す。「ソ連はアヘンだった」。昭和20年6月以降、東郷外相以下和平派はソ連を通じて戦争終結を図ろうとする。ところが、スターリンの方は日本との戦争に加わって領土を獲得する腹づもりだから、ソ連軍の準備が整う前に戦争が終わっては困る。恐るべきスピードで極東に兵力を移動させながら、日本に対しては、ソ連の中立を信じさせ、時間稼ぎをした。

和平派は見事にソ連の術策にはまり、日本の運命を決する貴重な2カ月余を空費したわけだ。長谷川教授は「希望的観測が戦略的思考にすりかわり、ソ連があるために英米との取引を回避してしまった」と分析し、現実を直視できなかった日本外交をアヘン中毒になぞらえた。

長谷川教授の目に、日本外交のおめでたさは今も変わっていない。「『アメリカと仲良くしさえすれば、アジアも問題ない』ということはない。アメリカも深いところに行くと反日感情がある」と強く警告した。

近頃のアメリカは、傲慢なカウボーイのような国になってしまったが、長谷川教授に言わせると、原爆投下を正当化する“歴史認識”を反省しない限り、アメリカのユニラテラルな振る舞いは改まらないそうだ。7月12日、「天皇ご自身が平和を望んでいる」という東郷外相の電報を解読したアメリカは、「皇室維持」を盛り込んだポツダム宣言案を準備する。

ところが実際のポツダム宣言は“無条件降伏”の押し付けに変わってしまった。わざわざ日本に受け入れられない内容にしたのはなぜか。日本の“拒否”によって「原爆投下を正当化するためだった」。戦争終結へのほかの道は閉ざし、投下に突っ走ったアメリカの姿を長谷川教授は鮮やかに示してくれた。


ゲスト / Guest

  • 長谷川毅 / Tsuyoshi Hasegawa

    カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授 / Professor of University of California, Santa Barbara

研究テーマ:著者と語る『暗闇-スターリン、トルーマンと日本降伏』

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