2006年07月06日 00:00 〜 00:00
パスカル・ラミー・WTO事務局長

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会見リポート

交渉再開へ精力的な活動期待

松岡 一弘 (時事通信経済部)

冗談を交えながら慎重に一つ一つ言葉を選んだ上で、「日本に譲歩の余地があることが確認できて有意義だった」と集まった記者に語りかける姿は、かつて欧州委員(通商委員)として精力的に活動していた印象とは異なる新鮮さを覚えた。6月末からジュネーブで開かれた世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会合が不調に終わったのを受け、自ら主要国・地域との調整役を務め、「助けを借りたい時にはまずベスト・フレンドに声をかける」として、最初の訪問国に日本を選んだ。

日本政府の交渉担当者のラミー氏評は「くせ者」「必ずしも信用できない」など、一筋縄ではいかないというものばかり。事務局長に就任してからも、その評価に大きな変化はみられない。

一方で「先延ばしの余地はない」「政治的合意をつけることが先決。今しか動く時はない」などと、交渉をまとめる意義を説く姿には、目標達成への強烈な意思を感じた。

1泊4日の強行スケジュールで、小泉純一郎首相をはじめ関係閣僚、経済界の代表らとの会談を次々とこなした。その姿勢は、欧州委員として精力的に活動していたことから付けられたあだ名「エグゾセ・ミサイル」をほうふつとさせる。

WTO新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)はその後の非公式閣僚会合でも各国の主張の隔たりが埋まらず、 今年末の最終合意を正式に断念。政治的圧力を背景に米国や欧州連合(EU)、ブラジル、日本など主要国・地域が互いに相手に譲歩を求めて動かなかったためで、交渉は長期化が必至の情勢となった。WTO自体の意義すら問われる状況となった今、めども立っていない交渉再開に向け、ラミー氏の精力的な活動が期待される。

ゲスト / Guest

  • パスカル・ラミー / Pascal Lamy

    WTO事務局長 / Director General, WTO

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