2006年06月20日 00:00 〜 00:00
福井俊彦・日本銀行総裁

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会見詳録


会見リポート

信頼回復への謝罪と決意

山脇 岳志 (朝日新聞論説委員)

福井総裁にとって、日本記者クラブでの初めての会見は、かつてない逆境のなかで行われた。総裁自身も、こんな形の登壇になろうとは思ってもみなかっただろう。

総裁が村上ファンドに一千万円出資していたことが問題になり、この日は収益の詳細を国会に報告することになっていた。会見場は、総裁の発言を聞きもらすまいと、250人以上の記者であふれかえった。

ふだんは柔和な笑みを絶やさない総裁が、この日の表情は硬く、笑顔も一切みられない。

村上ファンドからの利益はいくらにのぼるか、日銀への信頼が揺らぐ中できちんとした金融政策ができるのか。聴衆の関心は、その二点に絞られていたといえる。

ファンドへの投資を続けたことについて初めて「不徳の致すところ」と謝罪し、総裁就任時にファンドを解約すべきだったとの考えを示唆した。利益は夕方の臨時記者会見で公表することを明らかにした。

金融政策の運営について「早めに、小刻みに」と表現したため、日銀がゼロ金利政策を7月にやめて利上げに踏み切るという観測が強まり、株価が大幅に下がった。総裁は夕方の会見で火消しに努めたが、早期利上げ説は消えていない。

利上げ説には、総裁の「名誉回復」がからむ。今回かばってもらった政府に「借り」ができ、日銀は当分ゼロ金利を続けざるをえないという見方がある。総裁はそんな疑念を払拭したいはず、というのだ。

福井総裁は、村上問題と金融政策は全く関係ないと強調する。だが、総裁が陳謝するたびに日銀の弱みが露呈し、市場が過剰に反応する。日本経済のかじ取り役の信用失墜は深刻な事態である。

ゲスト / Guest

  • 福井俊彦 / Toshihiko Fukui

    日本銀行総裁 / Governor, Bank of Japan

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