2006年06月01日 00:00 〜 00:00
麻生太郎・外相

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会見リポート

日本の中央アジア外交

飯島 一孝 (毎日新聞編集委員)

国会が長引き、予定時間を30分近く過ぎていたが、さわやかなクールビズ姿で会場に現れた。総裁選前哨戦の最中だったものの、麻生外相は6月5日に東京で開く「中央アジア+日本」と銘打った会合に向け約30分スピーチした。

97年に初めて中央アジアを訪問してから関心を持っていたというだけに、19世紀の帝政ロシアと大英帝国の「グレートゲーム」から話を始めた。日本人になじみが薄い地域との前提で「中央アジア5カ国のGDP合計は約630億ドルで三重県一県規模とほぼ同じ」など、日本にひきつける工夫が目に付いた。

聴衆の耳目を集めたのは、ウズベキスタンのカリモフ大統領と会談した際、大統領から聞いた話だ。小さいころ、母親に毎日のように日本人捕虜の工事現場へ連れて行かれ、日本人が働く様子を見せられた。そして「日本人は誰も見ていなくてもよく働く。これを見習いなさい」といわれた。それ以来、日本がモデルだった、と語ったという。日本人の琴線に触れる話であり、ソ連時代から強権政治を維持する大統領のしたたかさを示すエピソードでもある。

外相は外交の指針として(1)アフガンなどを含めた広域からみる(2)開かれた地域協力を後押し(3)普遍的価値を共有したパートナーシップの三つを示した。最終的には、環状道路の復興と天然ガス・パイプラインの整備で「平和と安定の回廊」にしようという戦略だ。

しかし、エネルギー資源をめぐり、すでに「新グレートゲーム」が始まっている。とくに中露を軸にした「上海協力機構」が地域ブロック化しつつあり、それとのあつれきを心配する質問も出た。外相は「もめる理由はない」と答えたが、米国と中露のはざまでかじ取りが難しそうだ。

ゲスト / Guest

  • 麻生太郎 / Taro Aso

    外相 / Foreign Minister

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