2006年06月29日 00:00 〜 00:00
大野元裕・中東調査会上席研究員/宮家邦彦・元駐イラク公使「中東ベーシック」15

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会見リポート

テロが一大産業化したイラク

小倉 孝保 (毎日新聞外信部)

すでに馴染みとなっている「中東ベーシック」の15回目は、中東調査会上席研究員の大野さんと元駐イラク公使の宮家さんの2人を迎えて開かれた。

泥沼化するばかりのイラクの治安情勢について、大野さんは「プロのテロリストのやり方である自爆テロは1年前に比べ3分の1に減っているのに、イラク人の死者は逆に増加している」とし、国際テロリスト、ザルカウィ容疑者の死亡でも、治安の改善は望めないと分析。一方、宮家さんは、「冗談のような話」と前置きしたうえで、「イラクでは今や、テロ産業が一大産業に成長した。偵察を専門にする勢力や、拉致の実行をする勢力、交渉を得意とするグループなど、それぞれが得意分野を持ってしっかりと根を張った産業になった。また、外国からその産業に投資するファンドみたいなものまでできた」と、治安改善が進まない背景を柔らかく説明した。

また、宮家さんはやや見方を広げ、イラク戦争後の地域情勢についても分析。周辺諸国は、自分たちの政権の生き残りを真剣に考えるようになったとし、「イランは、フセイン政権が核を持っていないため攻撃されたと思ったかもしれない。だから、できるだけ時間稼ぎをして、核開発の既成事実を積み上げようとしているのかもしれない」と語った。

マリキ首相の正式政権が発足したイラク。会場からは、今後の見通しについての質問もあったが、それについては2人とも、「うーん、何とも難しい」。内容は暗くても、ほどよく笑いもこぼれ、時間の経過の速く感じる会だった。

ゲスト / Guest

  • 大野元裕 / Motohiro Ono

    中東調査会上席研究員 / Senior Research Fellow, Middle East Institute of Japan

  • 宮家邦彦 / Kunihiko Miyake

    元駐イラク公使 / Former Minister to Iraq

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:15

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