2006年06月26日 00:00 〜 00:00
ゲプハルト・ヒールシャー・ジャーナリスト「在日外国人がみた小泉政権5年」4

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会見リポート

戦後処理に大胆な行動と譲歩を

百瀬 好道 (NHK解説委員)

ゲプハルト・ヒールシャー氏は、日本を拠点に南ドイツ新聞の極東特派員を30年近く務めた在日外国人ジャーナリストきっての知日派。第一次佐藤内閣以降、18人の首相の政治手腕をウオッチし続けてきた。戦後の歴史や政策課題で日本と多くの共通点を持つドイツ出身のベテランジャーナリストの言葉は、鋭角的で説得力を持つ。

小泉首相について、氏は「マスコミを利用しながら自分の信条を直接国民に訴える、日本では珍しい欧米型のリーダー」だとその政治的異才に注目する。ただ小泉首相が「自民党をぶっ壊した」とする見方にはくみしない。「首相主導の人事と政策決定」という二つの武器で「派閥の機能を破壊し」ある程度の体質転換に成功はしたが、自民党の本質には変わりはないという冷静な見方だ。

郵政民営化をはじめ内政には一定の評価をするが、外交には点が辛い。議論百出の小泉首相の靖国神社参拝に関しては、「個人的な思いを実現するために、中国や韓国との関係を悪くするのは国益を損なうものだ」と手厳しい。

氏は中国や韓国との関係がぎくしゃくする要因として「戦後処理」の仕方が関わっていると指摘する。日独を同列に論じる事はできないとしながらも、氏は自分の故郷の東プロイセンが、戦後失われた例を挙げて「ドイツが近隣国に与えた危害を考えると領土割譲もやむを得ない」と言い切る。

その犠牲の上に欧州の今の繁栄と平和が築かれているからだ。氏は日本が、東アジアにもEUのような共同体を作る意志があるなら、未解決の戦後処理問題や領土問題で大胆な行動と譲歩をすべきだと熱意を込めて語った。

氏の主張に異論もあるだろうが、内向気味の日本にとって、外部の視線が依然として貴重であることを痛感した。

ゲスト / Guest

  • ゲプハルト・ヒールシャー / Gebhard Hielscher

    ジャーナリスト / Journalist

研究テーマ:在日外国人がみた小泉政権5年

研究会回数:4

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