2006年06月12日 00:00 〜 00:00
白鵬・大関

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会見リポート

草原のホスピタリティー

工藤 憲雄 (日本経済新聞編集委員兼論説委員)

ひな壇の両肘のついた椅子に192センチ、153キロの巨体は収まらなかった。途端に空気がなごんだ。すべてにゆったりとして鼻から全体に丸みのある童顔には、人を温かく包み込む草原のホスピタリティーがある。

父はモンゴル相撲では五連覇を含む六度の優勝を果たした大横綱。大柄で包容力ある母は外科医。白鵬は両親の最高の遺伝子を継承した。

新大関で優勝したそのスケールを見れば次の名古屋場所での横綱昇進を今やだれも疑わない。ものを考えるときは、すでに翻訳ではなくダイレクトに「日本語で考える」という。

ライバルを聞かれて「把瑠都(エストニア)」と答えた。「年も同じということで」とほかの力士に気遣いを見せるが、角界はまさにそういうことになっていくのだろう。

建国800年に燃えるモンゴルだが、日本の大相撲への関心は尋常ではないようだ。春場所、朝青龍との決定戦は、テレビの視聴率がなんと93%。「相撲が始まるとモンゴル中仕事はしない。車もあまり走らない」。チャンネルは5つあり、それぞれに解説者がいて相撲を放映しているそうだ。

子どものころから草原で自然と親しみパワーをもらってきた。ところが「今のモンゴルの子どもたちは一段と弱くなったと思います。日本人と変わらなくなりました。テレビを見て運動神経が落ちてます。草原の自然力が落ちて、日本に来ても(これからは)そうはいかない。僕あたりが最後(の世代)かな」。これもモンゴル来襲を危惧する会員の質問への配慮かもしれないが、歴史ものを読むのが大好きだそうで、時代を見る目は確かだ。よどみない日本語で語る21歳の白鵬は、やさしそうでも末恐ろしい人物に違いない。

ゲスト / Guest

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