2006年05月15日 00:00 〜 00:00
田中均・前外務審議官「北朝鮮」16

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会見リポート

「外交戦略」の重要性を強調

安尾 芳典 (共同通信論説副委員長)

小泉首相の劇的な02年9月の訪朝に向けて約1年間にわたり北朝鮮と事前協議を秘密裏に重ねて、一躍、注目を集めた。この訪朝が明らかになったその年の8月30日、 ソウル特派員として南北対話の取材中に、小泉訪朝の情報を得て本社に連絡したことを思い出す。

日朝秘密協議は1年間、マスメディアに漏れなかった。それから3年半たつが、依然として北朝鮮側の交渉相手は「ミスターX」としか分からない。「ミスターX」をめぐりさまざまな報道が週刊誌などで取り上げられたが、ずばり言い当てた報道はなかった。当然にこの点に質問が及んだが、外務省退任後も依然として守秘義務があるとした上で「大事なことは、その人が金正日総書記に通じているかどうかだった」と答えた。

北朝鮮による拉致、核問題に関しては、しばらくは手詰まり状態が続くとの見方を示した上で「(打開には)六カ国協議を動かすことが必要だ。そのためには米朝間で本当に深刻な話し合いが行われるようにすべきだ」と述べた。

小泉首相の靖国神社参拝などをめぐり中韓関係がこじれていることについて「日本は米国との関係の強さを利用し、主体的役割を果たすべきだ。次期首相も含め、大きな戦略と緻密な戦術を描き、結果をつくる交渉をしなければならない」と指摘した。現在の日本外交への不満がにじむ発言だ。

注目されている首相の3回目の訪朝については「国交正常化されていない国に、唐突に行って物事が成るものでない。綿密に準備し、一定の成果が予測されるときしか(首相は)行かない。そうした(日朝)協議が行われているように見えない」と語り、3度目の訪朝には否定的な見方を示した。今の外務省に、日朝首脳会談を裏方で準備できるほどの人物がいるのだろうかと思う。日本外交に欠ける「外交戦略」を何度も強調していたことが印象に残った。

ゲスト / Guest

  • 田中均 / Hitoshi Tanaka

    前外務審議官 / Former Deputy Minister for Foreign Affairs

研究テーマ:北朝鮮

研究会回数:16

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