2006年05月31日 00:00 〜 00:00
グレン・フクシマ・エアバス・ジャパン社長「在日外国人のみた小泉政権5年」1

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会見リポート

「異常なほどの対米依存」を懸念

宮智 宗七 (日本経済新聞出身)

知日派という表現に「熟」という字をかぶせて「熟知日派」と呼びたくなるほどの、この講師が「小泉政権5年」の変化全般について、否定的ないしは懐疑的な評価をくだした。それがこの会見のすべてであった。「構造改革路線」の実績について、全体として高い評価は与えられないといったのはその一例である。

もっとも、フクシマ氏の発言のほとんどは、そうした国内面への評価よりは、「対米」を含む日本の対外関係の停滞あるいは悪化を憂慮することにあてられた。

「小泉=ブッシュの関係は良好かもしれないが、日米関係全般は必ずしもそう言えない」「イラクへの陸上自衛隊派遣は湾岸戦争時の対日非難以来のトラウマを回避したかったためのものだろうが、私の見方では過剰反応であり、日本は別の方法での貢献が考えられたのではないか」「中国、韓国など近隣諸国との関係悪化は、日本の孤立を加速するという意味で外交に戦略性が欠落しすぎている」など、の指摘が相次いだ。

フクシマ氏は、自身が昨年から欧州系企業の社長に就任したこともあって、日本をいわば外部から第三者の眼で観察するようになった、と言う。その立場で考えると、日米関係の「異常なほどの親密さ」に注目するという。そして、これほど強い結びつきと心理的依存感は、明らかに多様化する外的環境への不適応とアジアの中での孤立─落伍の危険をはらんでいる、と警告する。

この論理構造は現実に沿っている、と私は考える。それに沿っていくと孤立への懸念と過度の対米親密化に伴うリスク回避の困難さが対米“密着”をさらに増幅する。その構造的悪循環を否定するのは難しかろう。昨日今日の話ではないかもしれないが、あらためて頭痛のタネになった。フクシマ氏は「異常なほど親密な国」からの肩すかしの危険さえ絶無ではないとも付け加えたのである。

ゲスト / Guest

  • グレン・フクシマ / Glen S. Fukushima

    エアバス・ジャパン社長 / President, Airbus Japan

研究テーマ:在日外国人のみた小泉政権5年

研究会回数:1

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